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脱・属人プログラム — 学習ノート

AIへの任せ方 3つの型
— 使いに行かせる/会議をさせる/手順書を回す

— サブエージェント・エージェントチーム・ワークフローの違い

「AIを複数動かす」と言っても、中身は3種類あります。似ているようで、向いている仕事も、かかる費用も、動かせる場所も違います。どれを選べばいいのかを、図で見て2問で決められるようにまとめました。

2026.09.11 作成 / Claude Code の機能を対象

先に結論
  1. 結果だけ欲しい → サブエージェント
    調べ物・下書き・並行作業。大半はこれで足りる
  2. 意見を戦わせたい → エージェントチーム
    企画の壁打ち・仮説の検証。ターミナルからしか動かない
  3. 決まった段取りを大量に回したい → ワークフロー
    数十〜数百件。会話が重くならない

01

違いは「誰が段取りを決めるか」だけ

3つとも「AIを複数動かす」点は同じです。違うのは誰が「次に何をやるか」を決めるかと、途中の結果がどこに溜まるか。この2つだけです。

段取りを決めるのは途中の結果はどこに
サブエージェントAIがその都度あなたの会話の中
エージェントチームリーダーがその都度共有のタスク表
ワークフロー書かれた手順書手順書の中
ひとことで サブエージェント=使いに行かせる
エージェントチーム=会議をさせる
ワークフロー=手順書を渡して回させる

02

型① サブエージェント — 使いに行かせる

裏で別のAIを立ち上げて作業させ、結論だけ受け取る仕組み。3つの中でいちばん安く、いちばん使うのがこれです。

あなた | 「これ調べて」 +--v----+ | メイン | <- 報告を見て「次は誰に頼むか」を毎回考える +--+----+ +-+-+ v v v 助手 助手 助手 それぞれ別の机で作業。助手同士は話さない | | | +-+-+ 報告 v ★ 報告はすべてメインの頭に入る

図1/サブエージェント

強みは柔軟さです。報告を見てから「じゃあ次はこれを調べて」と方向を変えられます。決まった段取りがないぶん、その場の判断で動けます。

弱点はここ 報告が全部あなたの会話に入ります。10件くらいなら問題ありませんが、数十件になると会話が容量オーバーして、話の前半を忘れ始めます。
なお、助手はさらに助手を呼べます(既定でメインの下に3層まで)。ただし指示書で持たせる道具を絞ると呼べなくなります。詳しくは サブエージェント入門

03

型② エージェントチーム — 会議をさせる

複数のAIを同じチームに入れて、互いに直接やり取りさせる仕組み。サブエージェントとの決定的な違いは、メンバー同士が話すことです。

あなた --------------+ | | 個々に直接 +--v-------+ | 話しかけられる | リーダー | <- あなたの画面。交代できない +--+-------+ | | 3人立てる | +--+--+ | v v v | A <-> B <-> C <----------+ +-----+-----+ メンバー同士が直接やり取りする (メンバーは下に助手を作れない)

図2/エージェントチーム

実際に議論するのか? 2人に「AIへの指示は細かくすべきか、ざっくりすべきか」を討論させたところ、途中で「反論しようとして相手の文章を読み込んだ結果、実は同じことを言っていた」と気づいて論点が絞られ、最後は「〜と明記するなら同意する」と条件付きで折り合って終わりました。
1人のAIに「賛成と反対の両方を出して」と頼んでも、この収束のしかたはまず出ません。ここがチームの価値です。
使う前に知っておくこと 実験的な機能で、既定はオフです。そしていつものチャット欄からは動きません。ターミナルで claude と打って起動した画面でだけメンバーが立ちます。
作れるのは「リーダー1人+メンバー数人」の1層だけ。メンバーがさらに人を増やすことはできず、1つの画面で持てるチームも1つだけです。組織図のような階層は作れません。
設定のしかた・ハマりどころの詳細は サブエージェント入門 の補足章にまとめてあります。

04

型③ ワークフロー — 手順書を回す

先に段取りを書いた手順書を作り、そのとおりに大量のAIを動かす仕組み。手順書を書くのはAIなので、あなたがプログラムを書く必要はありません。

よくある誤解 ワークフローは「サブエージェントの代わり」ではありません。手順書に動かされて実際に働くのも、サブエージェントです。
変わるのは「次に誰を動かすか」を決めるのが、AIか手順書かだけ。すでに作ってある指示書もスキルも、そのまま使えます。作り直しではなく、上に段取りの層を1枚かぶせるイメージです。
あなた | +--v----+ | メイン | (1) 手順書を書く(書くのはAI) +--+----+ v +==========+ | 手 順 書 | (2) 手順書が助手を動かす +===+======+ 誰に何を割り振るかは固定 +-+-+-+-+-- … 数十〜数百人 v v v v v 作業 作業 作業 作業 | | | | +-+-+ (3) 途中の結果は手順書の中に溜まる v (会話には出てこない) (4) 集計した1枚だけ v メイン

図3/ワークフロー

「途中の結果が会話に出ない」とは

ここがいちばん分かりにくいところなので、教材38本をチェックする例で比べます。

【サブエージェント】 会話 |1本目の報告(長文)|2本目|3本目|…|38本目| -> 読み終わる前に会話が容量オーバー 【ワークフロー】 会話 |古い記述があったのは3本。内容は◯◯| -> 受け取るのは集計した1枚だけ

図4/会話に入ってくる量の違い

受け取るのが「38件の生データ」ではなく「集計された1枚」だから、何百件回しても会話が重くならない、ということです。

「同じ作業の繰り返し」だけではない

手順書には順番枝分かれも書けます。「まず全員に調べさせる → 出てきた項目ごとに検証役を立てる → 生き残ったものだけ集計する」といった工程のある流れも組めます。

「同じことを並べるだけ」ではなく、段取りが決まっている仕事なら何でもと考えてください。逆に言えば、段取りが決まっていない仕事には向きません。

実行中に口は出せるのか

いつできること
実行中進捗を見る/止める。ただし個別に口出しはできない(手順書が走っているため)
終わった後結果を受け取って普通に指示できる。「この3本を直して」と続けられる
やり直すとき手順書を直して再実行。変えていない部分は前回の結果を使い回す
引き換えになるもの 柔軟さを捨てています。チームのように「途中で本人の画面に入って軌道修正する」使い方はできません。
その代わりに規模再現性(同じ段取りを何度でも同じように回せる)を得ています。
ワークフローにしてはいけない仕事 途中に人の判断が入る作業は、ワークフローに向きません。手順書は最後まで走り切るので、その確認ステップが成立しなくなるからです。
たとえば台本づくりでは「本文を書き切る前に、構成案だけ先に見せる」ようにしています。方向性を間違えたときの手戻りが重いためです。これをワークフローにすると、確認できないまま4本分の本文が出てきてしまいます。
見分け方は簡単です。始める前に、やることが全部決まっているか。「途中で見て決めたい」が1つでもあるなら、サブエージェントかチームを選んでください。

05

並べて比べる

サブエージェントエージェントチームワークフロー
ひとことで使いに行かせる会議をさせる手順書を回す
段取りを決めるのはAIがその都度リーダーがその都度書かれた手順書
互いに話すか話さない直接やり取りする話さない
途中の結果会話に全部入る共有のタスク表手順書の中(会話に出ない)
規模の目安数体〜20体3〜5人数十〜数百
途中で口出しできないできる(本人の画面に入る)止めることのみ
階層3層まで作れる1層だけ手順書しだい
どこで動くかどこでもターミナル限定どこでも
費用少なめ多い(人数ぶん)規模しだい
「どこで動くか」に注意 エージェントチームだけ、いつものチャット欄では動きません。ターミナルで claude と打って起動した画面が必要です。
裏を返すと、定期実行などの無人の自動化が、勝手にチーム化する心配はないということでもあります。

06

選び方 — 2問で決まる

任せたい作業がある | +----------+----------+ | Q1. 段取りが決まっていて、量が多い? +----------+----------+ はい ------+------ いいえ | | +----v-------+ +-----v--------------+ | ワークフロー | | Q2. 意見を戦わせたい? +------------+ +-----+--------------+ はい ----+---- いいえ | | +---------v--------+ +--v------------+ | エージェントチーム | | サブエージェント | +------------------+ +---------------+

図5/2問で決まる

迷ったら サブエージェントを選んでください。大半の仕事はこれで足ります。
チームが効くのは「1人のAIだと、自分が出した案を本気で否定できない」場面だけです。ワークフローが効くのは「手でやると現実的でない量」のときだけです。

07

共通の注意 — 上限とお金

数の上限がある

項目既定
同時に動く数20体まで(超えると新しく立てられない)
助手の階層メインの下に3層まで
指示書の説明の合計15,000トークンを超えると起動時に警告
実際に起きた事故 「3人立てて」と頼んだつもりが、その3人がそれぞれ助手を雇って、合計14体が同時に動いていたことがあります。上限に当たって作業が止まりました。
頼んだ人数と、実際に動く人数は違います。助手を呼ばせたくないときは、指示書で持たせる道具を絞ってください。

増やすときは「人数」より「肩書きの重ならなさ」

専門の助手を増やしたくなったとき、似た肩書きを並べても賢くなりません。呼ばれるかどうかは肩書き(description)の文章で決まるため、似たものが増えるとAIが迷います。

NG(誰が呼ばれるか不安定) 調査係A / リサーチ係 / 情報収集役 OK(明確に呼び分けられる) 事実を確認する係 / 反対意見を探す係 / 数字を計算する係

なお、指示書の説明が長くなりすぎると起動時に警告が出ます。肩書きは短く、詳しい指示は本文側へ。本文はその助手が動くときだけ読まれるので、いくら長くても普段の負担になりません。

08

「AIで会社を回す」はどこまでできるか

3つを覚えると、次に必ず「社長・部長・社員の組織を作って、AIだけで回せないか」と考えます。答えを先に書きます。

結論 常にいる会社は作れません。招集すれば集まる会社は作れます。

指揮系統は作れる

サブエージェントは3層まで重ねられるので、形の上では組織になります

あなた(社長) +- 部長A <- サブエージェント | +- 社員 社員 <- 部長が呼んだサブエージェント +- 部長B +- 社員 社員

足りないのは「明日も同じ会社であること」

3つとも1回の依頼で終わり、終わったら解散します。翌日にはもう、昨日の判断も、決めた方針も残っていません。会社が会社であり続けるのは、解散しないからです。ここが決定的に違います。

だから、こう考える 会社の中身を「人」に持たせないでください。AIの社員は毎回使い捨てで、立て直すたびに記憶ゼロから始まります。
残すべきものはファイルのほうです。方針は CLAUDE.md、仕事のやり方はスキル、役割は .claude/agents/ の指示書、決まった段取りは手順書
これがあれば、毎回ゼロから立ち上げても昨日と同じ判断をする会社になります。

これは、人の会社で属人化を解消するときとまったく同じ考え方です。頭のいい人を雇い続けるのではなく、その人のやり方を仕組みに移す。AIでも変わりません。

実物はこれ 動画の台本を4本まとめて書かせる「編集部」が、まさにこの形で動いています。方針は AGENTS.md、やり方はスキル1本、役割は指示書2つ。ライターは毎回、記憶ゼロで立ち上がります。昨日どんな台本を書いたかは覚えていません。それでも同じ品質で出てくるのは、指示書のほうが残っているからです。
フォルダの中身と、依頼1回で何が起きるかの流れ図は サブエージェント入門・実例章 に載せてあります。
なおこの5人はチームメイトではなくサブエージェントです。互いに議論せず、黙って書いて出してきます。台本を書く作業に会議は要らないので、これが正しい設計です。

なお「人がいなくても勝手に動き続ける」を作りたい場合は、定期実行(決まった時刻に自動で起動する仕組み)と組み合わせることになります。ただし定期実行ではエージェントチームは立ちません。無人で回すなら、使えるのはサブエージェントとワークフローの2つです。

まとめ

4行でおさらい

AIへの任せ方、これだけ
  1. 違いは「誰が段取りを決めるか」と「途中の結果がどこに溜まるか」だけ
    AIがその都度/リーダーがその都度/書かれた手順書
  2. 結果だけ欲しいならサブエージェント。大半はこれで足りる
    柔軟だが、報告が全部会話に入るので数十件で詰まる
  3. 意見を戦わせたいならエージェントチーム。ただしターミナル限定
    メンバー同士が直接やり取りする。1層だけで階層は作れない
  4. 段取りが決まっていて量が多いならワークフロー
    途中の結果が会話に出ないので何百件でも重くならない。代わりに途中で口出しできない

この教材の元(内容を直すときはこちらも見る):
・(関連)配布資料/subagents.html(サブエージェントの詳細・エージェントチームの設定とハマりどころ)/配布資料/claude-code-basics.html(用語集)/配布資料/skills.html(スキルとの違い)
・公式ドキュメント:Claude Code Docs「Subagents」「Agent teams」「Workflows」(code.claude.com/docs・2026-09-11 確認)で、段取りの決め方・途中結果の置き場・規模・階層の上限・同時実行数・チームの制約を裏取り
実機検証:エージェントチームを実際に立てて討論させ、チャットのパネルでは立たずターミナルでのみ立つことを2日にわたり対比確認。第3章の討論の実例と、第7章の「3人のつもりが14体」の事故はこのときの実測