先に結論
- 結果だけ欲しい → サブエージェント
調べ物・下書き・並行作業。大半はこれで足りる
- 意見を戦わせたい → エージェントチーム
企画の壁打ち・仮説の検証。ターミナルからしか動かない
- 決まった段取りを大量に回したい → ワークフロー
数十〜数百件。会話が重くならない
01
違いは「誰が段取りを決めるか」だけ
3つとも「AIを複数動かす」点は同じです。違うのは誰が「次に何をやるか」を決めるかと、途中の結果がどこに溜まるか。この2つだけです。
| 段取りを決めるのは | 途中の結果はどこに |
| サブエージェント | AIがその都度 | あなたの会話の中 |
| エージェントチーム | リーダーがその都度 | 共有のタスク表 |
| ワークフロー | 書かれた手順書 | 手順書の中 |
ひとことで
サブエージェント=使いに行かせる。
エージェントチーム=会議をさせる。
ワークフロー=手順書を渡して回させる。
02
型① サブエージェント — 使いに行かせる
裏で別のAIを立ち上げて作業させ、結論だけ受け取る仕組み。3つの中でいちばん安く、いちばん使うのがこれです。
あなた
| 「これ調べて」
+--v----+
| メイン | <- 報告を見て「次は誰に頼むか」を毎回考える
+--+----+
+-+-+
v v v
助手 助手 助手 それぞれ別の机で作業。助手同士は話さない
| | |
+-+-+ 報告
v
★ 報告はすべてメインの頭に入る
図1/サブエージェント
強みは柔軟さです。報告を見てから「じゃあ次はこれを調べて」と方向を変えられます。決まった段取りがないぶん、その場の判断で動けます。
弱点はここ
報告が全部あなたの会話に入ります。10件くらいなら問題ありませんが、
数十件になると会話が容量オーバーして、話の前半を忘れ始めます。
なお、助手はさらに助手を呼べます(既定でメインの下に3層まで)。ただし指示書で持たせる道具を絞ると呼べなくなります。詳しくは サブエージェント入門。
03
型② エージェントチーム — 会議をさせる
複数のAIを同じチームに入れて、互いに直接やり取りさせる仕組み。サブエージェントとの決定的な違いは、メンバー同士が話すことです。
あなた --------------+
| | 個々に直接
+--v-------+ | 話しかけられる
| リーダー | <- あなたの画面。交代できない
+--+-------+ |
| 3人立てる |
+--+--+ |
v v v |
A <-> B <-> C <----------+
+-----+-----+
メンバー同士が直接やり取りする
(メンバーは下に助手を作れない)
図2/エージェントチーム
実際に議論するのか?
2人に「AIへの指示は細かくすべきか、ざっくりすべきか」を討論させたところ、途中で「反論しようとして相手の文章を読み込んだ結果、実は同じことを言っていた」と気づいて論点が絞られ、最後は「〜と明記するなら同意する」と条件付きで折り合って終わりました。
1人のAIに「賛成と反対の両方を出して」と頼んでも、この収束のしかたはまず出ません。ここがチームの価値です。
使う前に知っておくこと
実験的な機能で、既定はオフです。そして
いつものチャット欄からは動きません。ターミナルで
claude と打って起動した画面でだけメンバーが立ちます。
作れるのは
「リーダー1人+メンバー数人」の1層だけ。メンバーがさらに人を増やすことはできず、1つの画面で持てるチームも1つだけです。
組織図のような階層は作れません。
設定のしかた・ハマりどころの詳細は サブエージェント入門 の補足章にまとめてあります。
04
型③ ワークフロー — 手順書を回す
先に段取りを書いた手順書を作り、そのとおりに大量のAIを動かす仕組み。手順書を書くのはAIなので、あなたがプログラムを書く必要はありません。
よくある誤解
ワークフローは「サブエージェントの代わり」ではありません。手順書に動かされて実際に働くのも、サブエージェントです。
変わるのは「次に誰を動かすか」を決めるのが、AIか手順書かだけ。すでに作ってある指示書もスキルも、そのまま使えます。作り直しではなく、上に段取りの層を1枚かぶせるイメージです。
あなた
|
+--v----+
| メイン | (1) 手順書を書く(書くのはAI)
+--+----+
v
+==========+
| 手 順 書 | (2) 手順書が助手を動かす
+===+======+ 誰に何を割り振るかは固定
+-+-+-+-+-- … 数十〜数百人
v v v v v
作業 作業 作業 作業
| | | |
+-+-+ (3) 途中の結果は手順書の中に溜まる
v (会話には出てこない)
(4) 集計した1枚だけ
v
メイン
図3/ワークフロー
「途中の結果が会話に出ない」とは
ここがいちばん分かりにくいところなので、教材38本をチェックする例で比べます。
【サブエージェント】
会話 |1本目の報告(長文)|2本目|3本目|…|38本目|
-> 読み終わる前に会話が容量オーバー
【ワークフロー】
会話 |古い記述があったのは3本。内容は◯◯|
-> 受け取るのは集計した1枚だけ
図4/会話に入ってくる量の違い
受け取るのが「38件の生データ」ではなく「集計された1枚」だから、何百件回しても会話が重くならない、ということです。
「同じ作業の繰り返し」だけではない
手順書には順番も枝分かれも書けます。「まず全員に調べさせる → 出てきた項目ごとに検証役を立てる → 生き残ったものだけ集計する」といった工程のある流れも組めます。
「同じことを並べるだけ」ではなく、段取りが決まっている仕事なら何でもと考えてください。逆に言えば、段取りが決まっていない仕事には向きません。
実行中に口は出せるのか
| いつ | できること |
| 実行中 | 進捗を見る/止める。ただし個別に口出しはできない(手順書が走っているため) |
| 終わった後 | 結果を受け取って普通に指示できる。「この3本を直して」と続けられる |
| やり直すとき | 手順書を直して再実行。変えていない部分は前回の結果を使い回す |
引き換えになるもの
柔軟さを捨てています。チームのように「途中で本人の画面に入って軌道修正する」使い方はできません。
その代わりに規模と再現性(同じ段取りを何度でも同じように回せる)を得ています。
ワークフローにしてはいけない仕事
途中に人の判断が入る作業は、ワークフローに向きません。手順書は最後まで走り切るので、その確認ステップが成立しなくなるからです。
たとえば台本づくりでは「本文を書き切る前に、構成案だけ先に見せる」ようにしています。方向性を間違えたときの手戻りが重いためです。これをワークフローにすると、確認できないまま4本分の本文が出てきてしまいます。
見分け方は簡単です。始める前に、やることが全部決まっているか。「途中で見て決めたい」が1つでもあるなら、サブエージェントかチームを選んでください。
05
並べて比べる
| サブエージェント | エージェントチーム | ワークフロー |
| ひとことで | 使いに行かせる | 会議をさせる | 手順書を回す |
| 段取りを決めるのは | AIがその都度 | リーダーがその都度 | 書かれた手順書 |
| 互いに話すか | 話さない | 直接やり取りする | 話さない |
| 途中の結果 | 会話に全部入る | 共有のタスク表 | 手順書の中(会話に出ない) |
| 規模の目安 | 数体〜20体 | 3〜5人 | 数十〜数百 |
| 途中で口出し | できない | できる(本人の画面に入る) | 止めることのみ |
| 階層 | 3層まで作れる | 1層だけ | 手順書しだい |
| どこで動くか | どこでも | ターミナル限定 | どこでも |
| 費用 | 少なめ | 多い(人数ぶん) | 規模しだい |
「どこで動くか」に注意
エージェントチームだけ、いつものチャット欄では動きません。ターミナルで claude と打って起動した画面が必要です。
裏を返すと、定期実行などの無人の自動化が、勝手にチーム化する心配はないということでもあります。
06
選び方 — 2問で決まる
任せたい作業がある
|
+----------+----------+
| Q1. 段取りが決まっていて、量が多い?
+----------+----------+
はい ------+------ いいえ
| |
+----v-------+ +-----v--------------+
| ワークフロー | | Q2. 意見を戦わせたい?
+------------+ +-----+--------------+
はい ----+---- いいえ
| |
+---------v--------+ +--v------------+
| エージェントチーム | | サブエージェント |
+------------------+ +---------------+
図5/2問で決まる
迷ったら
サブエージェントを選んでください。大半の仕事はこれで足ります。
チームが効くのは「1人のAIだと、自分が出した案を本気で否定できない」場面だけです。ワークフローが効くのは「手でやると現実的でない量」のときだけです。
07
共通の注意 — 上限とお金
数の上限がある
| 項目 | 既定 |
| 同時に動く数 | 20体まで(超えると新しく立てられない) |
| 助手の階層 | メインの下に3層まで |
| 指示書の説明の合計 | 15,000トークンを超えると起動時に警告 |
実際に起きた事故
「3人立てて」と頼んだつもりが、その3人がそれぞれ助手を雇って、合計14体が同時に動いていたことがあります。上限に当たって作業が止まりました。
頼んだ人数と、実際に動く人数は違います。助手を呼ばせたくないときは、指示書で持たせる道具を絞ってください。
増やすときは「人数」より「肩書きの重ならなさ」
専門の助手を増やしたくなったとき、似た肩書きを並べても賢くなりません。呼ばれるかどうかは肩書き(description)の文章で決まるため、似たものが増えるとAIが迷います。
NG(誰が呼ばれるか不安定)
調査係A / リサーチ係 / 情報収集役
OK(明確に呼び分けられる)
事実を確認する係 / 反対意見を探す係 / 数字を計算する係
なお、指示書の説明が長くなりすぎると起動時に警告が出ます。肩書きは短く、詳しい指示は本文側へ。本文はその助手が動くときだけ読まれるので、いくら長くても普段の負担になりません。
08
「AIで会社を回す」はどこまでできるか
3つを覚えると、次に必ず「社長・部長・社員の組織を作って、AIだけで回せないか」と考えます。答えを先に書きます。
結論
常にいる会社は作れません。招集すれば集まる会社は作れます。
指揮系統は作れる
サブエージェントは3層まで重ねられるので、形の上では組織になります。
あなた(社長)
+- 部長A <- サブエージェント
| +- 社員 社員 <- 部長が呼んだサブエージェント
+- 部長B
+- 社員 社員
足りないのは「明日も同じ会社であること」
3つとも1回の依頼で終わり、終わったら解散します。翌日にはもう、昨日の判断も、決めた方針も残っていません。会社が会社であり続けるのは、解散しないからです。ここが決定的に違います。
だから、こう考える
会社の中身を「人」に持たせないでください。AIの社員は毎回使い捨てで、立て直すたびに記憶ゼロから始まります。
残すべきものはファイルのほうです。方針は CLAUDE.md、仕事のやり方はスキル、役割は .claude/agents/ の指示書、決まった段取りは手順書。
これがあれば、毎回ゼロから立ち上げても昨日と同じ判断をする会社になります。
これは、人の会社で属人化を解消するときとまったく同じ考え方です。頭のいい人を雇い続けるのではなく、その人のやり方を仕組みに移す。AIでも変わりません。
実物はこれ
動画の台本を4本まとめて書かせる「編集部」が、まさにこの形で動いています。方針は
AGENTS.md、やり方はスキル1本、役割は指示書2つ。
ライターは毎回、記憶ゼロで立ち上がります。昨日どんな台本を書いたかは覚えていません。それでも同じ品質で出てくるのは、
指示書のほうが残っているからです。
フォルダの中身と、依頼1回で何が起きるかの流れ図は
サブエージェント入門・実例章 に載せてあります。
なおこの5人はチームメイトではなくサブエージェントです。互いに議論せず、黙って書いて出してきます。台本を書く作業に会議は要らないので、これが正しい設計です。
なお「人がいなくても勝手に動き続ける」を作りたい場合は、定期実行(決まった時刻に自動で起動する仕組み)と組み合わせることになります。ただし定期実行ではエージェントチームは立ちません。無人で回すなら、使えるのはサブエージェントとワークフローの2つです。
まとめ
4行でおさらい
AIへの任せ方、これだけ
- 違いは「誰が段取りを決めるか」と「途中の結果がどこに溜まるか」だけ
AIがその都度/リーダーがその都度/書かれた手順書
- 結果だけ欲しいならサブエージェント。大半はこれで足りる
柔軟だが、報告が全部会話に入るので数十件で詰まる
- 意見を戦わせたいならエージェントチーム。ただしターミナル限定
メンバー同士が直接やり取りする。1層だけで階層は作れない
- 段取りが決まっていて量が多いならワークフロー
途中の結果が会話に出ないので何百件でも重くならない。代わりに途中で口出しできない
この教材の元(内容を直すときはこちらも見る):
・(関連)配布資料/subagents.html(サブエージェントの詳細・エージェントチームの設定とハマりどころ)/配布資料/claude-code-basics.html(用語集)/配布資料/skills.html(スキルとの違い)
・公式ドキュメント:Claude Code Docs「Subagents」「Agent teams」「Workflows」(code.claude.com/docs・2026-09-11 確認)で、段取りの決め方・途中結果の置き場・規模・階層の上限・同時実行数・チームの制約を裏取り
・実機検証:エージェントチームを実際に立てて討論させ、チャットのパネルでは立たずターミナルでのみ立つことを2日にわたり対比確認。第3章の討論の実例と、第7章の「3人のつもりが14体」の事故はこのときの実測