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脱・属人プログラム — 学習ノート

作ったアプリをどこに置く?
デプロイ先3社比較

— Vercel・Cloudflare・Netlify|置き場所(ホスティング)の選び方
コーポレートサイト・LP・社内ツール・顧客向けチャットボット

AIに手伝ってもらってアプリを作れるようになると、次に必ず「これ、どこに置けば人に使ってもらえるの?」で止まります。候補としてよく名前が挙がるVercel(バーセル)Cloudflare Workers(クラウドフレア・ワーカーズ)、そして3つ目のNetlify(ネットリファイ)。この3つの違いと、迷ったときの決め方を非エンジニア向けにまとめました。

2026.08.08 作成

この話の結論(4つだけ)
  1. 決め手は「作るものの種類」ではなく「サーバー側で何が動くか」
    同じコーポレートサイトでも、表示するだけならCloudflare寄り、Next.jsで作り込むならVercel寄り。名前で決めようとすると外す
  2. Vercelの強みは作り込むほど効く。だから簡単なものでは出番が減る
    強みの中身は「Next.jsを設定なしで置ける」こと。表示するだけのサイトでは、この強みを活かす場面が少ない
  3. 会社の仕事なら、Vercelの無料プランは最初から使えない
    規約で「非商用・個人利用のみ」。社内ツールも顧客案件も対象外なので、使うなら月20ドルが確定する。Cloudflareは無料でも商用に使える
  4. 3つ目のNetlifyは「作りやすさ」と「無料でも商用OK」の両取りだが、表示するだけのページでもメーターが回る
    2025年9月4日以降に作った新規アカウントは前払いの「クレジット制」(それ以前のアカウントは旧プランのまま)。使い切るとサイトが止まる(無料プランは追加購入できない)。表示するだけのサイトを長く置くなら、この3つの中ではCloudflareが素直

CHAPTER 1

そもそも「置き場所」って何のこと?

AIと一緒にアプリを作ると、まず自分のパソコンの中だけで動く状態ができあがります。この時点では、他の人は使えません。パソコンを閉じたら止まりますし、そもそも他人からは見えないからです。

これを「誰でもURLを開けば使える状態」にする作業が必要で、そのとき借りる場所が「置き場所」——専門用語でホスティングです。VercelもCloudflareも、この置き場所を貸してくれる会社です。

たとえ話 自宅のキッチンで作った料理が「パソコンの中で動くアプリ」。
お客さんに食べてもらうにはお店の場所を借りる必要があります。
VercelとCloudflareは、そのテナントの大家さんにあたります。同じ料理でも、どのテナントを借りるかで家賃も設備も変わる、という話です。

大事なのは、置き場所を変えても、作ったアプリの中身は基本的に同じだということです。後から引っ越すこともできます。ですから「一生の選択」ではありません。ただし引っ越しには手間がかかるので、最初に向き不向きを知っておくと得をします。

先に整理:WordPressとは別の話です

ここでいちばん混乱しやすいのがWordPressとの関係です。役割がまったく違うので、先に切り分けておきます。

WordPressこの教材で扱うもの
何をするものサイトを運用する完成品のソフト自分で作ったサイトやアプリを置く場所
主に触る人記事を書く人(非エンジニア)作る人(またはAI)
管理画面最初からあるない(必要なら自分で作る)
置き場所PHPが動くレンタルサーバーVercel/Cloudflare

WordPressは、VercelにもCloudflareにも置きません。WordPressはPHPという言語とデータベースが動く環境を必要とし、VercelもCloudflare Workersも主にJavaScript系のプログラムを動かす場所だからです。WordPressを使うなら、エックスサーバーやConoHaのようなレンタルサーバーが普通の選択になります。

ややこしいところ 「WordPressのサイトでCloudflareを使っている」という話は昔からよくあります。ただしそれは、Cloudflareを"置き場所"ではなく"前に立つ番人"として使っているケースです。
Cloudflareの本業はもともと他社のサーバーの前に立って、速くする・攻撃から守ることでした。この教材で扱っているのは、そこから発展した「Cloudflareの中でプログラムを動かす(Workers)」という別の使い方です。
判断の目安:記事を頻繁に更新するメディアやブログならWordPress。決まった内容を見せるサイトや、自分で作ったツール・アプリなら、この教材の話です。

この教材でいちばん大事な言葉:「サーバー側の処理」

この先、「サーバー側で何が動くか」という言い方が何度も出てきます。置き場所の判断は、最終的にすべてここで決まります。逆にここが分からないままだと、最後まで読んでも自分のケースを判断できません。先に押さえてください。

Webページには、仕事をする場所が2つあります。

ブラウザ側サーバー側
どこで動く?見ている人の
スマホ・パソコンの中
置き場所にある
向こう側のコンピューター
やること表示する/ボタンで開閉する/
その場で計算・変換する
保存する/秘密の鍵を使う/
人ごとに違う中身を出す
費用かからない
(相手の端末を借りているため)
動いた分だけかかる
この「サーバー」は誰のもの? VercelやCloudflareから借りているコンピューターです。自分で買うものでも、会社に置くものでもありません。

ややこしいのは、この教材に「サーバー」が2つの意味で出てくることです。
「サーバー側の処理」の“サーバー”= 置き場所として借りているコンピューター(VercelやCloudflareのもの)
「今ある社内サーバー」(第6章のTunnelの話)= 自社が持っている実機
この教材でずっと言っている「サーバー側」は前者です。

なお、昔ながらの「1台まるごと借りて月額固定」とも違います(WordPressを置くレンタルサーバーはその形です)。VercelやCloudflareは必要なときだけ動く場所を使い、動いた分だけ払う仕組みです。

だから「サーバー側の処理が増える=費用がかかる」「ブラウザ側で完結する=相手の端末が働くのでこちらは0円」という話になります。静的な配信が無料・無制限なのも、ファイルを渡すだけで借りているコンピューターが何も計算していないからです。

「サーバー側の処理があるか」の見分け方

次のどれかに当てはまれば、たいていサーバー側の処理があります

ひとつも当てはまらないなら、そのページはただ表示されているだけ——つまり「サーバー側の処理がほぼない」状態です。

ページ数の話ではありません 会社概要・サービス紹介・実績・採用情報・お知らせ……こうした「読んでもらうページ」だけでできているサイトは、何十ページあっても、ここに入ります
判断しているのはページの数ではなく、ページの性質です。「小さいサイトだけが対象」ではありません。
なぜ「AIを呼ぶ」はサーバー側なのか 秘密の鍵(APIキー)は、ブラウザ側に置けません。ブラウザに送ったものは、見ようと思えば誰でも見られてしまうからです。
だからAIを呼ぶ処理は必ずサーバー側になります。チャットボットにサーバーが要るのは、この理由です。鍵の扱いは API・APIキー入門 で詳しく扱っています。

いちばん多い質問:問い合わせフォームはどっち?

答えは「送信先が自分か、外部か」で変わります。フォームがあるかどうかでは決まりません。

フォームの作り方自分のサーバー側の処理結果
外部サービスを埋め込む
Googleフォーム、Formrun、
HubSpot、UTAGE など
ない
受け取って保存するのは
相手のサービスのサーバー
サイトは静的なまま。実際、多くの会社サイトがこの形
自分で作って自分で受け取る
送信内容をメールで送る、
スプレッドシートに書く など
あるただしごく軽いので、どちらに置いても困らない
「軽い」と「重い」の目安 問い合わせフォームは、月に数件〜数十件・1回あたり数KBです。Cloudflareの無料枠(1日10万回)に対しては誤差なので、気にする必要がありません。

軽い(どちらでもよい):問い合わせフォーム/予約の受付/たまのお知らせ更新
重い(Vercel寄りになる):ページを開くたびにデータベースを引いて画面を組み立てる(会員サイト、ECの商品一覧)/毎回AIを呼ぶ/毎回画像を加工する

つまり判断が変わるのは、ログイン・会員機能・管理画面からの更新など、サーバー側でやることが増えてきたときです。「フォームがあるから」だけで身構える必要はありません。

CHAPTER 2

2つの正体をひとことで

Vercel=「Next.jsの開発元がやっている置き場所」

Next.js(ネクストジェイエス)は、Webアプリを作るときによく使われる道具(フレームワーク)です。Claude Codeに「Webアプリ作って」と頼むと、かなりの確率でこれが使われます。

Vercelは、そのNext.jsを作っている会社そのものが運営している置き場所です。だから相性がいいのは当たり前で、「作ったものをそのまま置ける」体験が一番なめらかです。

Cloudflare Workers=「世界中の通信の入口にプログラムを置く仕組み」

Cloudflareはもともと、世界中にある通信の中継地点を持っている会社です(ネットの高速道路のサービスエリアのような設備を、世界各地に持っているイメージ)。

Workersは、その各地の中継地点そのものに、あなたのプログラムを置けるという仕組みです。利用者に物理的に近い場所で動くので反応が速く、通信設備を自前で持っているぶんデータを送り出す料金がかかりません。ここが最大の個性です。

「速い」を具体的に言うと Vercelも画面やファイルの配信は世界中の拠点から行います。両者の差が出るのはサーバー側の処理が動く場所のほうです。
Vercelは公式ドキュメントによると、Node.js版の関数(Vercel Functions)は既定で1つの地域(米国東部)で動きます(複数の地域に置けるのは有料プラン以上)。日本から使うと、処理のたびにアメリカまで往復する形です。(Vercelにも利用者の近くで動かすEdge Runtimeという別方式はありますが、使える機能に制限があります)
Cloudflareは最初から利用者に近い拠点で動くのが前提の設計です。「Cloudflareのほうが速い」ではなく「処理の置き場所の考え方が違う」と捉えるのが正確です。
この違いを一言で Vercel=「作りやすさ」を売っている大家さん
Cloudflare=「速さと通信の安さ」を売っている大家さん
どちらが偉いという話ではなく、売っているものが違います。

※3つ目のNetlifyは、この2つの性格が分かってからのほうが理解しやすいので、第8章で扱います。位置としてはVercel側(作りやすさを売る大家さん)です。

CHAPTER 3

料金の実際(2026年8月時点)

VercelCloudflare WorkersNetlify
無料プランあり。ただし規約で非商用・個人利用のみあり。1日10万リクエストまで(商用OKあり。月300クレジット(規約に非商用の制限は見当たらない)。ただし使い切るとサイトが止まる
有料の入口月20ドル(開発できる人1人分+20ドルぶんの利用枠込み)月5ドル(月1,000万リクエストぶん込み)月9ドル(1,000クレジット・1人用)/チームで使うなら月20ドル〜(3,000クレジット)
人が増えたら開発する人1人増えるごとに月20ドル
(見るだけの人は無料)
人数では増えない月20ドルのProなら人数無制限で追加料金なし
※無料・月9ドルのプランは
そもそも人を追加できない
置けるアプリの数無制限無制限500個まで
データを送り出す料金月1TBぶん込み。超えたら使った分だけ請求かからない1GBあたり20クレジット
(月20ドルのプランで換算すると
1GBあたり約0.13ドル)
AIの返事を待っている時間CPU分は止まるが
メモリ分は課金が続く

公式に「待ちの間はCPUの課金は
止まるがメモリの課金は続く」と明記
課金されない
CPU時間だけを数える仕組み
止まる仕組みは確認できず
「実行時間×メモリ」としか
書かれていない
1回の処理の上限300秒(有料なら設定で800秒まで)CPU時間で最大5分(初期値は30秒)60秒
(定期実行30秒・
裏で走らせる処理は15分)
1回の処理で使えるメモリ標準2GB(無料はここが上限。有料なら設定で4GBまで)128MB
※Workersの場合。重い処理向けの
Containersなら最大12GiB(有料)
標準1GB
(月20ドルのPro以上なら
設定で4GBまで)

いちばんの落とし穴:Vercelの無料プランは仕事に使えない

Vercelの無料プラン(Hobbyプラン)は、公式の規約で「非商用・個人利用のみ」と明記されています。つまり——

「まず無料で始めて、うまくいったらお金を払おう」という発想が通用しません。会社の仕事に使うと決めた時点で、月20ドルが確定します。ここは割り切って最初から予算に入れておくのが正解です。

なぜ「社内アプリ」もダメなのか

いちばん誤解されるのがここです。「社外に公開しない社内ツールなら、商用ではないのでは?」と考えたくなります。

ですが規約は、そのアプリが何をしているかで判定していません。判定の基準はこの一文です。

制作にどの部分であれ関わった"誰か"の金銭的利益を 目的とするデプロイ = 商用 ※Vercel公式「Fair Use Guidelines」より

FIG. 商用かどうかの判定基準

社内アプリは、この基準に二重で当てはまります

つまり「決済機能がない」「広告を出していない」「社外に公開していない」は、どれも判定に関係しません。よく引用される「決済・広告・アフィリエイト」の一覧は、規約上「これらを含むがこれらに限らない」と書かれた例示であって、条件のすべてではないためです。

よくある疑問:そのまま使ったらどうなる? 技術的に自動で止められる仕組みではないため、動いてしまいます。ただし規約違反である以上、指摘を受ければ止まります。
判断の基準は「気づかれるかどうか」ではなく、「止まったとき誰が困るか」に置いてください。社内ツールが止まればその日の業務が止まり、顧客に納品したものが止まれば信用の問題になります。
実は、負担はそれほど大きくない Vercelの月20ドルには、20ドルぶんの利用枠が含まれています
社内の数人が使う程度のツールなら、この枠内に収まって追加の請求はほとんど発生しません。実質の負担は月20ドル(約3,000円)だけ——ここで悩む時間のほうが高くつきます。

どうしても無料で通したいなら

Cloudflare Workersの無料プランには、商用利用そのものの制限はありません。ただし代わりに2つの条件があります。

「社内ツールで、決済がなく、処理も軽い」——この条件にあてはまるなら、Cloudflareの無料枠を正当に使えます。

正直な注意 料金体系は非常に変わりやすい分野です。上の表は2026年8月に3社の公式ドキュメントで確認した内容ですが、契約する前に必ず公式サイトで最新を確認してください。特に「無料枠がどこまでか」「超えたらいくらか」は、そのときの公式ページを見るのが確実です。

CHAPTER 4

お金の話で本当に大事なこと

金額の表を見ると「月5ドル vs 月20ドル、Cloudflareが4倍安い」と読みたくなります。でも実務では、そう単純になりません。理由が3つあります。

理由① Vercelは「アプリの数」では増えない

Vercelの有料プランは置けるアプリの数が無制限です。顧客案件のチャットボットを10個作っても、置き場所の費用は月20ドル+実際に使った分だけ。1件ずつ課金されるわけではありません。「案件が増えるほど差が開く」というイメージは正しくないのです。

理由② AIの返事待ちは、昔ほど高くつかない

チャットボットの処理は、時間のほとんどが「AIに質問を投げて、答えが返ってくるのを待っている時間」です。ここが従来のサーバーだと丸ごと課金対象で、コストの読めなさの原因でした。

現在は「計算していた時間」と「場所を確保していた時間」を分けて数える仕組みになっていて、待ち時間の扱いが3社で違います。

AIの返事を待っている間
Vercel計算の料金は止まるが、場所の確保代(メモリ)は課金が続く。公式に「待ちの間はCPUの課金は止まるが、メモリの課金は続く」と明記されている。※ただし場所の確保代はCPU側より大幅に安い単価に設定されています
Cloudflare課金されない。そもそも計算していた時間(CPU時間)だけを数える仕組み
Netlify止まる仕組みは公式で確認できず。「実行時間×メモリ」とだけ書かれており、待ちを除外する記述が見当たらない

昔のレンタルサーバーのように待ち時間がまるごと高くつくことはなくなりましたが、「待っている間はまったくの無料」ではありません。チャットボットのように待ち時間が長い作りを本格運用するときは、ここが効いてきます。

たとえ話 昔のレンタルサーバーはタクシーの時間メーターでした。信号待ちでも、走っているときと同じ料金が上がっていく。
今は「走った分の料金」と「席をおさえておく料金」が分かれた形です。信号待ちの間、走行料金は止まりますが、席をおさえる料金は続きます(Cloudflareは席代のない仕組みなので、待っている間は完全に止まります)。
いずれにせよ昔のように待ち時間がまるごと高くつくことはない——ただしゼロでもない、というのが今の姿です。

理由③ チャットボットで一番高いのは、置き場所ではない

顧客向けチャットボットを作ると、費用の内訳はだいたいこうなります。

チャットボット1本の月額イメージ 置き場所(VercelやCloudflare) …… 数ドル〜20ドル AIのAPI利用料(Claude等) …… 使った量しだい(ここが主役) ドメイン代 …… 年 千円台 → 置き場所の差は、たいてい全体の誤差におさまる

FIG. 費用の内訳。悩むべきはどこか

月15ドルの差で何時間も比較検討するより、早く動くものを作って、AIの使い方を改善するほうが効きます。置き場所選びは「大きく間違えなければいい」程度の判断です。

CHAPTER 5

Vercelの強みが効く場面

Vercelの強みは、ひとことで言えば「作りやすさ」です。ただしここには、見落とされがちな条件がついています。

先に押さえる条件 この「作りやすさ」はNext.jsを使う前提のもので、作り込むほど効いてきます
逆に、表示するだけのサイトではこの強みを活かす場面が少なく、出番が減ります。(技術を揃えたい・将来の拡張を見込む、といった理由で表示中心のサイトをNext.jsで作ることはあります。「使ってはいけない」という話ではありません)
つまり「作りやすい=簡単なものに向いている」ではなく、「複雑になったときに楽ができる」という意味です。ここを取り違えると、置き場所の判断ごと逆になります。

Next.jsを、ほぼ設定なしで置ける

Vercelの公式ドキュメントには、「Next.jsをVercelにデプロイするのは zero-configuration(設定不要)」と明記されています。Next.js自体をVercelが開発・保守しているので、当然といえば当然です。

Claude Codeが書くプログラムも、ごく標準的な形(Node.jsという一般的な実行環境向け)で出てきます。Vercelはこれをそのまま受け取れるので、置くまでの手数が少なくて済みます

「絶対に詰まらない」ではありません 環境変数の設定漏れなどが原因で、Vercelでも「手元では動いたのに本番で動かない」は起こります
詰まらないのではなく、詰まる原因が1つ少ない——という程度に捉えてください。

変更を「公開前に見る」仕組みが標準でついてくる

Vercelは、修正するたびに本番とは別の確認用URLを自動で発行します。本番に反映する前に「この変更、大丈夫か」を目で見て確かめられる仕組みです。顧客に納品したものを改修するときなど、「直したつもりが本番を壊した」を防げるので、慎重に進めたい場面では効きます。

ただし、これはVercelだけの機能ではありません Cloudflareにも同じ仕組みがあります。公式ドキュメントに、変更を送るたびに専用の確認用URLが自動で作られると明記されています。
つまりこれは「Vercelを選ぶ理由」ではなく、どちらを選んでも受けられる恩恵です。Vercel側の本当の差は、1つ前の項目——Next.jsをほぼ設定なしで置ける——のほうにあります。

CHAPTER 6

Cloudflareが向いている場面

Cloudflareが明確に有利なのは、次の4つのどれかに当てはまるときです。

① 「社員だけが使える」状態にしたい場合

社内ツール(在庫確認・申請・日報など)を、会社のGoogleやMicrosoftのアカウントでログインさせて、社員だけに絞りたい——このニーズには、CloudflareのAccessという機能が正面から応えます。「@自社ドメインのメールを持つ人だけ通す」といった条件を、プログラムを書かずに設定画面で作れます。

Vercelでも公開範囲を制限する仕組みはありますが、外部アカウントによるログイン限定は最上位プランが必要になります。社員限定の社内ツールを作るなら、ここは差が大きいところです。

② 顧客に「サーバー代はそちら持ちで」と請求する場合

月5ドルに近い固定額で、データを送り出す料金がかからないため、請求額が読めます。顧客に「毎月これくらいです」と説明しやすいのは実務上かなり大きいです。Vercelは月20ドル+使った分なので、月によって変動し「今月なぜ高いの?」という説明が発生しえます。

③ 大きなファイルをたくさん配る場合

動画・画像・PDFなど重いファイルを多くの人にダウンロードさせる仕組みでは、通信料が主なコストになります。Workers(アプリを動かす場所)にもR2(ファイル置き場)にも、公式にデータの送り出しに対する課金がありません。ここは明確な差になります。

※これは今回扱っているWorkersとR2の話です。Cloudflareのすべてのサービスが同じというわけではなく、動画配信や画像配信の専用サービスは配信量に応じた料金がかかります。

ちなみにHTMLや画像のような「ただ置いてあるファイル」への閲覧リクエストは、無料プランでも有料プランでも「無料かつ無制限」と公式に明記されています。よく言われる「無料は1日10万リクエストまで」の制限は、サーバー側のプログラムが動いた回数にかかるもので、置いてあるファイルを配るだけのアクセスは対象外です。この教材ページ自身もCloudflareで配信されていますが、費用はかかっていません。

「無制限」の範囲を正確に 無制限なのは「閲覧リクエストの回数」であって、Cloudflareに一切の制限が無いという意味ではありません。置けるファイルのほうには上限があります。
1ファイルあたり25MiBまで
ファイル数は無料プランで20,000個、有料で100,000個まで
・サーバー側のプログラム(Workers)が動く回数は、無料プランで1日10万回まで
普通のサイトやLPで引っかかる数字ではありませんが、「上限という概念が無い」と言うと言い過ぎです。正しくは「置いてあるファイルを配るぶんには、回数も通信量も課金されない」です。

④ 小さな仕組みを何十個も量産する場合

「顧客ごとに小さな自動化を1つずつ持つ」ような使い方では、1日10万リクエストまでの無料枠が効きます。小さく・数が多い用途はCloudflareの土俵です。

今すでにCloudflareを使っている場合 静的なページ(この教材ページやLPのように、決まった内容を表示するだけのページ)をCloudflareで公開している場合、それを移す必要はまったくありません。無料で速く、十分に安定しています。この教材で扱っているのは「プログラムが動くアプリ」をどこに置くか、という別の話です。
なお、これから新しく作るものについては、Cloudflare自身がこの教材で扱っているWorkersの側で始めることを公式に勧めています(今動いているページは、そのままで問題ありません)。
もっと深く知りたい人へ Cloudflareを「社内システムの土台」として本格的に使う話は、別教材の「中小企業のためのCloudflare入門」で詳しく扱っています。
とくにAccess(社員だけがログインできるようにする関所)とTunnel(今ある社内サーバーを作り直さずに安全に公開する仕組み)は、Vercelに同等のものがないCloudflare独自の強みです。社内向けの仕組みを本気で作るなら、そちらを読んでから決めてください。
アプリを作れば必ず出てくる「データはどこに保存するのか」「ファイルはどこに置くのか」という次の問題も、そちらで扱っています。
その前に確かめること 作るのが社員だけが使うアプリで、会社がGoogle Workspaceを契約しているなら、この3社に持ち込む前に確かめることがあります。「そもそも外に置く必要があるのか」です。
置き場所・ログイン・データが最初からWorkspaceの料金に含まれているため、追加費用ゼロ・独自ドメインなしで終わることがあります(社外の人が使う/独自ドメインが要る/1回6分を超える処理/データがGoogleの外にある——このどれかに当たったら、この教材の話に戻ります)。
→ 別教材「社内アプリはGoogleの中で作れる

CHAPTER 7

Cloudflareの落とし穴(正直に)

安くて速いなら全部Cloudflareでいいのでは、と思うところですが、非エンジニアが踏みやすい落とし穴があります。ここは正直に書きます。

落とし穴① 「普通のプログラム」が一部そのままでは動かない

Cloudflare Workersは、一般的な実行環境(Node.js)の一部だけを再現した特殊な環境です。公式ドキュメントにも「Node.jsの機能の一部(サブセット)を提供」と明記されています。

やっかいなのは、使えない機能でも「読み込みだけは成功して、実行すると失敗する」ものがある点です。動くように見えて、途中で止まります。原因の切り分けは、慣れていないとかなりきついです。

たとえ話 Cloudflare Workersは屋台の厨房です。回転が速く、家賃も安い。
ただし置ける調理器具が限られていて、「オーブンを使うレシピ」は持ち込めません
レシピ(プログラム)のほうを厨房に合わせて書き直す必要が出てきます。

落とし穴② Next.jsを載せるには「変換」が要る

Claude Codeがよく使うNext.jsをCloudflareで動かすには、OpenNext(オープンネクスト)という変換ツールを1枚はさむ必要があります。これは実際に広く使われている方法で、Next.js側の公式ブログでも紹介されている正規のやり方です。

ただし、Cloudflare自身の公式アダプタは2026年中に提供予定という段階で、この領域はまだ動いています。手順やバージョン対応が変わりやすいため、Vercelに置くのと比べると「調べる時間」が余分に必要です。

さらにCloudflareは公式ドキュメントで、手元で開発するときはNode.jsで動き、公開したあとはworkerdという別の実行環境で動くと説明しています。そのうえで「本番に近い確認をするには、専用のプレビュー用コマンドを使うこと」と案内しています。つまり手元と本番が違う環境であることは、Cloudflare公式が前提として認めている話です。

この違いを一言で Vercel=そのまま載せる
Cloudflare=Cloudflareの実行環境に合わせる層が1枚入る
Cloudflareでも動かないわけではなく、その1枚を理解する手間が要る、という違いです。

落とし穴③ 「動かない原因」を調べるのが難しい

①②が重なると、エラーが出たときに何が原因か分からない状態になりやすくなります。AIに聞いても、Cloudflare特有の制約は情報が少なく、解決までの往復が増えます。

この「調べる時間」が、月15ドルの差より高くつく——これが、迷ったらVercelと言い切る理由です。

落とし穴④ 無料枠は「軽い処理」しか入らない

もうひとつ、性能そのものの制約があります。Cloudflare Workersの無料プランは、1回の処理で使えるCPU時間が10ミリ秒までです。

この数字が厳しいことは、Cloudflare自身が同じページで書いています。平均的な処理は約2.2ミリ秒で収まる一方、「ログイン処理・画面の組み立て・大きなデータの読み込みを含む処理は10〜20ミリ秒を使う」と明記されているのです。

つまりふつうのWebアプリを作ると、公式の想定値の時点で無料枠を超えます。「Cloudflareは無料で使える」は、正確には「軽いAPIなら無料で使える」という意味だと理解しておいてください。月5ドルの有料プランを前提に考えるほうが実態に合います。

ただし「AIの取次ぎ」だけは、この10ミリ秒に当たりません ここが分かりにくいところですが、CPU時間は「自分で計算している時間」だけを数えます。Cloudflare公式は「ネットワークの待ち時間(外部への問い合わせ・データの読み込みなど)はCPU時間に数えない」と明記しています。
さらにHTTPで呼ばれるWorkersには、処理全体にかかる時間(待っている時間を含む)の上限がありません——利用者のブラウザがつながっている限り続けられる、と公式に書かれています。

つまりチャットボットのように「AIに質問を投げて、返事を待って、そのまま返す」だけの処理は、30秒待っても消費するCPU時間はごくわずかです。10ミリ秒の壁に当たるのは「サーバー側で自分が計算する処理」(ログイン処理・画面の組み立て・大きなデータの読み込み)のほうで、AIの取次ぎはそこに入りません。

無料プランのWorkersは1日100,000リクエストまで使えるので、1社向けの問い合わせボット程度なら、まず使い切りません。「重い処理に見えて、実はCloudflareが最も素直に通る形」——落とし穴④の例外として覚えておいてください。

※あわせて、Cloudflareの利用規約(Self-Serve Subscription Agreement)には無料プランの商用利用を禁じる条文はありません。無料プランで明示的に禁止されているのは Section 2.2.1(h) の「無料サービスを受けているサイト上で、クレジットカード情報(個人用・事業用)を処理・収集すること」だけです。決済をしないチャットボットは、この制限に当たりません(2026-08-21に規約本文で確認)。

あわせて、1回の処理で使えるメモリも128MBです(Vercelは標準2GB、Proなら設定で4GBまで)。画像の加工や大きなファイルの処理は、ここで頭を打ちやすくなります。

ただし「Cloudflareでは重い処理ができない」ではありません この128MBはWorkers(この教材の主役)の制限です。Cloudflareには別にContainers(コンテナ)という重い処理のための仕組みがあり、公式ドキュメントによると1つあたり最大4vCPU・12GiBのメモリ・20GBのディスクまで使えます(Workersの有料プランで利用可)。
ただしこれはWorkersとは別の仕組みで、扱いも一段むずかしくなります。最初の1本を決めるときは、Workersの128MBを基準に考えて問題ありません——重い処理が必要になったときに「Cloudflareにもその手がある」と思い出せれば十分です。
誤解しないでほしいこと Cloudflareが劣っているという話ではありません。制約を理解して設計できる人にとっては、速くて安い優れた選択肢です。ここで言っているのは「非エンジニアが、最初の1本を、迷いながら作る」という条件での向き不向きです。条件が変われば答えも変わります。

CHAPTER 8

3つ目の選択肢:Netlify

置き場所を調べていると、3つ目の名前として必ず出てくるのがNetlify(ネットリファイ)です。売っているものはVercelに近く、「作ったものをGitに送るだけで公開できる体験」が主力です。Next.jsも設定なしで置けます。

ただし、この教材の判断軸——サーバー側で何が動くか——に載せると、Netlifyにはほかの2つと決定的に違う点があります。先にそこから書きます。

大前提:ネットで見かける数字は、ほとんど古い

Netlifyは2025年9月4日に、料金の仕組みそのものを作り替えました。公式ドキュメントに「2025年9月4日以降、すべての新規Netlifyアカウントは新しいクレジット制のプランを使う」と明記されています。それ以前に作られたアカウントは「レガシー(旧)プラン」という別体系のまま残っています。

日本語の解説記事でよく見る「無料で月100GBまで」「ビルド300分」「メンバー追加は1人19ドル」といった数字は、この旧プランの数字です(公式の旧プラン一覧に、そのまま載っています)。これから登録する人には当てはまりません。

なぜここを最初に書くか 置き場所の解説記事は、料金改定に追いつかないまま残り続けるのがふつうです。Netlifyは特に差が大きく、旧プランと新プランでは「何にお金がかかるか」の考え方ごと違います
検索で出てきた記事の数字をそのまま信じると、判断を丸ごと間違えます。公式の料金ページを自分で開く——これはNetlifyに限らず、この分野の基本動作です。

新しい仕組み:クレジット制=毎月配られる回数券

新プランでは「クレジット」という共通の点数が毎月配られ、やったことに応じて減っていきます。転送量・リクエスト数・処理時間をバラバラに数えるのをやめて、1本の点数にまとめた形です。

何をしたら減るか減るクレジット
本番に公開する(1回)15
確認用の公開(プレビュー)0(無料・無制限)
データを送り出す(1GB)20
リクエスト(1万回)2
サーバー側の処理(メモリ1GB×1時間)10
フォームの送信無料・無制限
Netlify経由でAIを使うAI利用料1ドルにつき180
プラン月額もらえるクレジット
Free0ドル300/追加購入できない(公式表現は「hard limit」)
Personal9ドル1,000/足りなければ500クレジット5ドルで自動追加できる
Pro20ドル〜3,000〜20,000(20,000なら月126ドル)/メンバーは無制限・無料

★判断軸に載せると:Netlifyは「表示するだけ」でもメーターが回る

ここがこの章の核心です。上の表をよく見てください。「リクエスト」と「データの送り出し」がクレジットを消費します。そして公式ドキュメントは、その中身をこう定義しています。

「利用者やシステムが、あなたのプロジェクトに置かれた コンテンツにアクセスするたびに1リクエストと数える。 HTMLページ、画像、JavaScript、CSSなどの 静的ファイルへのリクエストも含む※Netlify公式「How credits work」より

FIG. Netlifyが「リクエスト」と呼んでいるもの

つまりサーバー側で何も動いていないページ——第1章で「置いてあるファイルを配るだけ」と説明した状態でも、Netlifyでは見られた回数と送った量の両方が課金対象になります。

ここがCloudflareとの、いちばん大きな違いです。

「置いてあるだけのファイル」への
アクセスは?
CloudflareNetlify
見られた回数無料・無制限
(公式に明記。無料プランの
「1日10万回」はサーバー側の
プログラムが動いた回数の話)
課金対象
1万回ごとに2クレジット
送り出したデータ量かからない課金対象
1GBごとに20クレジット
300クレジットで何ができるか(換算) 無料プランの300クレジットを、それぞれ1つのことだけに使った場合の目安です。(公式は単価しか出していないため、この換算はこちらで計算したものです)

本番への公開だけに使うと …… 月20回まで
データの送り出しだけなら …… 約15GB
リクエストだけなら …… 約150万回

実際には合算で減ります。ここで効いてくるのが1回15クレジットの「本番公開」です。AIと一緒に作って直しては公開する進め方だと、1日1回直すだけで月30回=450クレジット。それだけで無料枠を超えます。

使い切るとどうなる:サイトが止まる

ここは必ず知っておいてください。公式ドキュメントの表現はこうです。

「クレジット残高を使い切ると、チームのすべての プロジェクト(サイト/アプリ)が一時停止され、 訪問者は各URLで `Site not available` のページを見ることになる」 ※Netlify公式「How credits work」より

FIG. クレジットを使い切ったときの挙動

さらに公式のFAQには「1つのサイトが上限を超えると、アカウント上のすべてのサイトが停止する」とも書かれています。有料プランなら自動チャージ(クレジットの自動追加)を有効にして止まらないようにできますが、無料プランには追加購入の手段がありません。翌月まで待つか、有料に上げるかの二択です。

これは「高い/安い」の話ではありません 止まる仕組みは、使いすぎて高額請求が来ないという長所でもあります(Vercelの無料プランやCloudflareにも似た保護はあります)。
問題は止まる対象です。会社のコーポレートサイトやLPが「Site not available」になるのは、費用の問題ではなく信用の問題になります。会社の顔になるページを無料プランに置かない——これがNetlifyでの実務的な結論です。

無料プランを仕事に使えるか

Vercelでいちばんの落とし穴だった点(第3章)を、Netlifyでも確認しました。

Netlifyの利用規約(Self-Serve Subscription Agreement)を通して確認したところ、「非商用」「個人利用のみ」に当たる言葉は文書中に見当たりませんでした(2026年8月9日確認)。Vercelのような「無料プランは商用禁止」という条文は無い、というのが調べた結果です。

ただし、無料プランについて第6条にはこう書かれています。

・無料枠はNetlifyの裁量で提供されるものである ・理由の有無を問わず、予告なくプロジェクトを停止しうる ・無料枠のプロジェクトは共用環境で動き、品質の保証(SLA)は無い ・攻撃などで問題が起きた場合、Netlifyは  該当プロジェクトを停止することで解決する ※Netlify「Self-Serve Subscription Agreement」第6条の要旨

FIG. Netlify無料プランの規約上の位置づけ

まとめると「規約で禁止されてはいないが、止められても文句を言えない前提」です。Vercelのように「使った時点で規約違反」ではないぶん健全ですが、会社の仕事で使うなら有料前提で考えるという結論は変わりません。

社員だけに見せたい場合

第6章でCloudflareの強みとして挙げた「社員だけに限定する」を、Netlifyでやる方法は3つあります。

やり方必要なプラン中身
非公開にする無料〜Netlifyにログインした人だけが見られる。ただし無料・Personalプランでは「チームのオーナー1人だけ」。実質、自分しか見られない
非公開+メンバー招待月20ドル(Pro)人数無制限で招待でき、追加料金もかからない。ただし相手にNetlifyのアカウントを作ってもらう必要がある
共有パスワード月20ドル(Pro)合言葉を知っている人だけ見られる。アカウント不要で手軽だが、パスワードは共有される
会社のGoogle/Microsoftアカウントでログイン(SSO)Enterprise
(要問い合わせ)
ここが目当てなら、Netlifyでは最上位プランが必要
Cloudflare Accessとの違い CloudflareのAccessは、「@自社ドメインのメールを持つ人だけ通す」という条件を、相手にCloudflareのアカウントを作らせずに設定できます(会社のGoogleやMicrosoftのログインをそのまま使える)。
Netlifyで同じことをするにはEnterpriseプランが必要です。月20ドルのProでできるのは「Netlifyのアカウントを作ってチームに入ってもらう」か「共有パスワード」まで。
社員限定の社内ツールという条件だけで見れば、Cloudflareの優位は3社の中でも変わりません。

Next.jsは、Vercelと同じく設定なしで置ける

ここはNetlifyの明確な強みです。公式ドキュメントに「Netlifyは主要なNext.jsの機能すべてを、設定なし(zero configuration)でサポートする」と明記されています。仕組みは、第7章でCloudflareの落とし穴として出てきたOpenNextという変換ツールですが、Netlify版はNetlify自身が作って保守しており、自動で最新版が使われます

つまりCloudflareでは「自分で変換ツールを入れて、バージョン追従も自分で追う」作業が、Netlifyでは要りません。この一点においては、NetlifyはVercel側に立っています。

ただし完全に同じではありません 公式が挙げている制限のうち、非エンジニアに関係しそうなのは「利用者の近くで動かす指定(Edge Runtime)をしたページも、実際は関数のリージョンでNode.jsとして動く」という点です(機能そのものは失われない、とも書かれています)。
ほかにNetlifyのフォーム機能はNext.jsと組み合わせると追加のコードが要る、といった細かい制限が公式に列挙されています。

サーバー側の処理は、どこで・どれだけ動くか

項目Netlifyの仕様
動く場所(既定)米国東部(オハイオ)。東京を含む12の地域に変更できるが月20ドルのPro以上1つの関数が動くのは1か所だけ(複数地域に置いて近い方で動かす、はできないと公式に明記)
メモリ標準1GB。クレジット制のPro以上なら設定で4GBまで(メモリを上げると料金も比例して上がる、と公式が明記)
1回の実行時間60秒(定期実行は30秒、裏で走らせる処理は15分)
送受信できるデータの大きさ1回6MBまで(画像などは実質4.5MB)/流しながら返す場合は20MB
利用者の近くで動く仕組み
(エッジ)
あり(Edge Functions)。Denoという実行環境で利用者に最も近い拠点で動く。ただし1回あたりCPU 50ミリ秒・メモリ512MBと軽い処理向け

第2章でVercelについて「関数は既定で米国東部の1リージョン」と書きましたが、Netlifyも同じ考え方です。3社のうち「最初から利用者に近い場所でサーバー側の処理が動く」のはCloudflareだけ、という整理になります。

公式で確認できなかったこと(正直に) ①AIの返事を待っている時間が課金されるか:Netlifyの課金は「関数の実行時間×メモリ」とだけ書かれており、待ち時間を除外する仕組みの記載が見つかりませんでしたVercelは「待ちの間はCPUの課金は止まる(メモリは続く)」、Cloudflareは「CPU時間だけを数える」と明記があるのに対し、Netlifyにはそれに当たる記述が無い——という状態です。待ち時間が長い作り(チャットボットなど)を本格運用する前に、実際の請求で確かめてください。※エッジ側(Edge Functions)については「待ち時間は数えない」と明記がありますが、これは上限の話で、通常の関数の課金の話ではありません。

②ファイル保存(Netlify Blobs)の取り出し料金:公式の料金表にBlobs単体の単価の記載を確認できませんでした(機能自体はベータ版として全プランで使えます)。動画やPDFを大量に配る用途で検討するなら、ここは事前に問い合わせが要る項目です。Cloudflare R2は「取り出し無料」と公式に明記されているので、この用途での差は大きい可能性があります。

結局、Netlifyはどこで効くのか

こんなとき判定
Next.jsのアプリを作りたい/
でもVercelの「無料は商用禁止」が引っかかる
◎ Netlifyの出番
設定なしで置けて、無料プランでも商用の制限が規約に無い。3社の中でここだけ埋まる隙間
チームで使う(人数が多い) 月20ドルで人数無制限。Vercelは1人増えるごとに20ドル
フォームの受け取りをしたい フォーム機能が無料・無制限で標準装備(自分で作らなくてよい)
表示するだけのサイト・LP・教材ページ△ Cloudflareのほうが素直
静的ファイルへのアクセスまで課金対象で、使い切ると止まる
社員だけに限定したい△ Cloudflareのほうが素直
会社アカウントでのログイン限定はEnterprise必須
動画・PDFを大量に配る 送り出しが1GBあたり20クレジット。Cloudflareは無料
利用者の近くで処理を動かしたい 通常の処理は1地域のみ。Cloudflareの土俵
3社を一言で Vercel=「作りやすさ」を売っている大家さん(ただし会社で使うなら最初から有料)。
Cloudflare=「速さと通信の安さ」を売っている大家さん(配る・守る・絞るが得意)。
Netlify=「作りやすさ」をVercelより緩い条件で売っている大家さん(ただし置いておくだけでもメーターが回る)。

CHAPTER 9

やってはいけない「分離」

置き場所を調べていると、「画面はVercel、処理はCloudflare」と分ける構成を紹介する記事に出会います。かっこよく見えますし、実際にそうしている人もいます。

ただし、最初の何本かでは真似しないでください。非エンジニアが分離すると、ほぼ確実に次の3つで止まります。

分離すると起きること中身
ブラウザに止められる別の住所(ドメイン)どうしの通信は、ブラウザが安全のために遮断する仕組みがある。設定を正しく書かないとつながらない
ログイン状態が消えるログイン情報を持ち回る仕組みが、住所が違うと引き継がれない。「ログインしたのにログアウトされる」が起きる
原因を探す場所が2つになる不具合が出たとき「画面側か、処理側か」を毎回切り分ける必要が出る。慣れていないと詰む

分離が正解になるのは、アプリが十分に大きくなって、処理の部分だけ別に育てたくなったときです。それは「困ってから」でまったく遅くありません。

原則 最初は1つの置き場所に全部まとめる
これは手抜きではなく、原因を1か所に閉じ込めておくための設計判断です。

CHAPTER 10

3つの質問で決める

実際に迷ったときは、上から順に答えてください。

Q1. Next.jsで作り込む? / サーバー側で重い処理がある? ログイン付きの顧客向けサービス/大きな画像加工/大量集計/長時間の処理 など │ ├─ はい ────────→ Vercel(長い処理・重い処理に強い。 ただし無料は商用不可・1人ごとに月20ドル) └─ いいえ │ Q2. どちらかに当てはまる?   ① 開発・運用する人が複数いる ② 無料のまま商用で試したい │ ├─ はい ───→ Netlify(無料でも商用OK。Proは月20ドル〜でメンバー無制限。 ただし無料は使い切ると止まるクレジット制) └─ いいえ │ └───→ Cloudflare (表示中心のサイトからブラウザ完結ツールまで広い。  静的ファイルへのアクセスは無料・無制限) ※ 社員だけに見せたい/動画やPDFを大量に配る場合も、Cloudflareが有力です。 ※ Next.jsを複数人で作るなら、人数無制限のNetlifyも候補に入ります。

FIG. 置き場所の判断フロー

この2問がなぜこの順番なのか この流れは「Cloudflareを既定にして、特別な事情があるときだけ他を選ぶ」という組み立てになっています。理由は単純で、Cloudflareがいちばん守備範囲が広いからです。表示中心のサイト、ブラウザの中で完結するツール、社員限定の社内ツール、大きなファイルの配信——これらは全部Cloudflareの土俵で、しかも静的ファイルを配るぶんには費用がかかりません。

そこで先に「Cloudflareでは素直にいかない事情」から確認します
Q1=処理の重さ。Cloudflareは1回の処理に使えるメモリが128MBで、Node.jsも一部しか動きません(第7章)。重い処理やNext.jsの作り込みは、ここで無理をしないほうが早いのでVercelに行きます。
Q2=お金と人数。「どちらか一方でも当てはまれば、はい」です。「1人で作るけれど、無料のまま商用で試したい」も『はい』——①に当てはまらなくても②で拾われます。Vercelは開発する人1人ごとに月20ドルで、無料プランは規約上そもそも商用に使えません。Netlifyはその逆で、無料でも商用に使え、Proなら人数無制限。だから①でも②でもNetlifyに寄ります。

どちらにも当てはまらなければ、Cloudflareに戻ってくる——それがこの図の形です。詳しくは第8章
この2問で取りこぼす1つのケース Next.jsを複数人で作る場合は、Q1で「はい」になってVercelに行きますが、NetlifyもNext.jsを設定なしで置けます(第8章)。そしてVercelは1人ごとに月20ドル、Netlifyは月20ドルで人数無制限——つまり人数が増えるほど、Netlifyのほうが安くなります
処理が本当に重いならVercel(Netlifyは1回60秒まで)、そうでなくて人数が多いならNetlify、と覚えてください。2問に収めた図では、ここまで表現できていません。

この図の外側にある4つ目の選択肢:Google Apps Script

ここまでの3社は「外に置く」という前提の話でした。ただし社員だけが使うAIツールなら、そもそも外に出さずにGoogle Workspaceの中で完結できます。Apps ScriptにはHTML Service(画面を自分で作れる仕組み)があるからです。

社内向けなら最有力、顧客向けなら外れる Google Workspaceを契約済みの会社なら、置き場所・ログイン・データが料金に込みで、追加の契約はゼロです。しかもスプレッドシートがそのままデータベース兼管理画面になるので、会話ログが自動で貯まって、非エンジニアがその場で開いて読める——ここは3社のどれにもない強みです。

一方で顧客向けに一般公開するチャットボットには向きません。理由は下の表のとおりですが、とくに1文字ずつ表示(ストリーミング)ができない点が効きます。AIの返事は10〜30秒かかるので、その間画面が無言のまま固まって見えるためです。

「社内向けのAIツール=Apps Script/顧客向け=3社のどれか」と覚えておけば、まず外しません。社内側の詳細は別教材「社内アプリはGoogleの中で作れる」を参照してください。
見るところApps Script(Googleの中)3社(外に置く)
追加の契約不要
Workspace契約に込み
置き場所の契約が要る
(無料枠もあり)
1文字ずつ表示
(ストリーミング)
できない
投げて待って一括で返る作りのため、返事が出るまで画面が無言になる
できる
独自ドメイン使えない
script.google.com/macros/s/… という長いURLのまま
使える
自社サイトへの埋め込みできるがサンドボックス化されたiframeの中
setXFrameOptionsMode の指定が必要)。見た目の作り込みに制約が出る
制約なし
社員だけに限定設定ひとつ
「同じドメインの全員」を選ぶだけ
Cloudflare Accessなら可。VercelのIdPログイン限定は最上位プラン
会話ログの置き場スプレッドシートがそのまま使える別途データベースを用意する
上限外部呼び出し20,000件/日(無料のGmail)/100,000件/日(Workspace)・同時実行30・実行は6分/回Cloudflare無料は1日100,000リクエスト

用途別の目安

作るものどちら寄りかひとこと
Next.jsで作り込むWebサイト・サービスVercel設定なしでそのまま置ける。Cloudflareだとアダプターを挟むぶんの手間が入る
お客様がログインして使うWebサービス
※画面をサーバー側で組み立てる作りの場合
Vercel画面と処理をまとめて1か所に置ける。ログイン機能そのものはCloudflareでも作れるので、決め手になるのは「画面の組み立てをサーバー側でやるか」のほう
予約・申し込みなど、
サーバー側の処理があるサイト
Vercel処理が重くなっても2GBまで使える。軽いフォーム程度ならCloudflareでも十分
サーバー側で画像の加工・Excelの集計をする処理Vercel標準2GB(Proなら設定で4GBまで)。CloudflareのWorkersは128MBなのでここで頭を打ちやすい(重い処理向けのContainersという別の仕組みもあり、そちらは最大12GiB)。ただし何十分もかかるような大量処理は、どちらでもなく専用のサーバーを検討したほうがよい
ブラウザの中だけで動く変換ツール
(サーバー側の処理がないもの)
Cloudflare置いてあるファイルを配るだけなので、Vercelの強みが効かない。静的ファイルへのアクセスは無料・無制限で、アクセスが増えても費用が変わらない。処理は利用者の端末で走るのでメモリ制限も無関係
顧客向けチャットボットどちらでもAIのAPIを呼ぶのでサーバー側の処理は必ずある。ただしやっているのは「AIの返事を待つ」ことなので処理は軽く、128MBでも足りる。Cloudflare無料枠のCPU 1回10ミリ秒にも当たらない(待ち時間はCPU時間に数えないため=第7章)。「顧客が触るからVercel」にはならない。画面をNext.jsで作るならVercel、シンプルな画面+APIだけならCloudflareが安い。そもそも費用の大半はAIのAPI代なので、置き場所で悩む価値は小さい(第4章)
社員だけがログインして使う社内ツール
(在庫確認・申請・日報など)
CloudflareAccessで「@自社ドメインの人だけ」に絞れる。Vercelで外部アカウントによるログイン限定をするには最上位プランが必要になるため、ここは差が大きい。※Google Workspace契約済みなら、そもそも外に出さずApps Scriptで完結する手もあります(本章の「4つ目の選択肢」)
今ある社内サーバーを外出先から使うCloudflareTunnelで作り直さずに安全に公開できる。Vercelに同等機能なし
会員向けに動画教材やPDFを配るサイトCloudflareデータの送り出しが無料。配る量が増えても費用が跳ねない
他のシステムから呼ばれる小さな窓口(API)Cloudflare軽い処理を大量に置く用途はここが土俵
顧客にサーバー代を請求する案件Cloudflare金額を説明しやすいことが価値になる
表示中心のコーポレートサイト・
LP・教材ページ

※誰が見ても同じ内容のもの。
ページ数は何十あってもよい
Cloudflareサーバー側で何も動かないので、Vercelの強みを使わない。静的配信は無料・無制限で速い。しかもコーポレートサイトは商用なので、Vercelだと月20ドルが確定する。ここがいちばん費用差の出る項目※Vercelでも静的サイトは問題なく配信できます。「Vercelでは無理」ではなく「費用が上がる」という話です。他の案件と置き場所を揃えたいなら、払う判断も成立します
Next.jsで作りたいが、
無料のまま始めたい
Netlify設定なしで置ける手軽さはVercelと同じで、無料プランに「商用禁止」の条文が無い(3社で唯一この隙間が埋まる)。ただし使い切るとサイトが止まるので、会社の顔になるページは有料前提で(第8章)
触る人・見る人が多いチームで
Next.jsのアプリを運用する
Netlify月20ドルでメンバー無制限。Vercelは開発する人が1人増えるごとに月20ドル。フォーム機能も無料・無制限で付いてくる
とりあえず試したい・勉強用どちらでもVercelの無料プランは個人の非商用のみである点に注意。Netlifyの無料プランはその制限が無いかわりにクレジットを使い切ると止まる
この表は「線引き」ではありません 上の表は「こちらのほうが素直」という目安であって、どちらかでしか作れないという意味ではありません。Cloudflareで顧客向けのWebサービスを作ることもできますし、Vercelで社内ツールを作っても何の問題もありません。
本質的な違いは用途ではなく、得意な領域です。
Vercel=Webアプリを作って公開するまでの体験(作りやすさ・確認用URL)。
Cloudflare=通信・配信・アクセス制御まわり(速さ・送り出し無料・Access/Tunnel)。
Netlify=Vercelに近い作りやすさを、緩い条件で(無料でも商用の制限なし・人数無制限・フォーム標準装備)。
迷ったら「作るものの種類」ではなく、どの強みが効く場面かで考えてください。
※この表はVercelとCloudflareの2択を基準に作ってあります。Netlifyが答えになる場面は第8章の末尾にまとめました。

「コーポレートサイト」のような"サイトの種類"で決めようとすると、必ず外します。同じコーポレートサイトでも、読んでもらうページだけで構成されているならCloudflare(ページ数は何十あっても同じです)、Next.jsで作り込んで会員機能まで載せるならVercel——と答えが変わるからです。

表の右列を「おすすめ」ではなく「どちら寄りか」としているのは、そのためです。「こちらでしかできない」と読まないでください。本当に片方でしかできないのは、この教材の中ではAccess(社員だけに絞る)とTunnel(既存サーバーの公開)だけです。
見た目に惑わされない実例 「iPhoneのHEIC写真をJPGに変換するWebサービス」を考えてみます。画像を加工するのだから、メモリに余裕のあるVercelでは?——と思うところですが、答えは変わります。

変換を利用者のブラウザの中で行う作りにした場合、サーバーはHTMLとJavaScriptを置いてあるだけになります。すると——
サーバー側で大きなメモリを使えるというVercelのメリットを活かせない
・アクセスが増えても静的ファイルは無料・無制限(Cloudflare)
・計算するのは利用者の端末なので、128MBの制限も関係ない

作るものの名前ではなく、サーバー側で何が動くかで決まります。

なお「サーバー側で処理するならVercel」と決まるわけでもありません。Cloudflareでもサーバー側の処理はできます。違いは「できるかどうか」ではなく「手間がどれだけかかるか」です。

軽い処理なら、どちらでもそのまま動きます。大きな画像をまるごとメモリに載せるような処理になると、Vercelは設定でメモリを上げるだけで届くのに対し、CloudflareはContainersという別の仕組みに持ち替えることになります(Workersは128MBのため)。Next.jsを動かすのにアダプターを1枚挟むのと、同じ構図です。

ほかにも、この章で見てきたCPU時間の上限や、Node.jsの一部しか使えない点が判断材料になります。

CHAPTER 11

まとめ

  1. 置き場所は「一生の選択」ではない
    後から引っ越せる。悩みすぎて作らないほうが損。
  2. 決め手は「作るものの種類」ではなく「サーバー側で何が動くか」
    同じコーポレートサイトでも、同じ画像変換ツールでも、中身しだいで答えが変わる。名前で決めようとすると外す。
  3. Vercelが効くのは、Next.jsを使うときと、サーバー側で重い処理をするとき
    「Next.jsを設定なしで置ける」が強みの中身。読んでもらうだけのサイトでは、この強みを活かす場面が少ない。
  4. Cloudflareが効くのは、配信・社員限定・既存サーバーの公開
    静的配信は無料・無制限、送り出しの通信も無料。Access(社員だけに絞る)とTunnel(既存サーバーを作り直さず公開)は、Vercelに同等のものがない。
  5. Netlifyが効くのは、Next.jsを無料から始めたいときと、触る人が多いとき
    設定なしで置ける手軽さはVercelと同じで、無料プランに「商用禁止」の条文が無い。月20ドルで人数無制限。ただし置いてあるだけのページでも通信とWebリクエストが課金対象で、使い切るとサイトが止まる。
  6. 会社の仕事に使うなら、Vercelの無料プランは選択肢に入らない
    規約で非商用・個人利用のみ。最初から月20ドルを見込んでおく。Cloudflareは無料でも商用に使え、Netlifyも規約上の商用禁止はない(ただし「予告なく止めうる」と明記)。
  7. 料金の仕組みは、記事より先に公式を見る
    Netlifyは2025年9月に課金の考え方ごと作り替えた(旧プランは別体系のまま残っている)。検索で出てくる「無料で100GB」などの数字は旧プランの話。数字を拾う場所は解説記事ではなく公式の料金ページ
  8. 最初は1つの置き場所にまとめる
    「画面はこっち、処理はあっち」の分離は、困ってから考えればいい。
この教材の立ち位置 ここに書いたのは「非エンジニアが、AIと一緒に、最初の数本を作る」という前提での判断基準です。エンジニアが本格的なサービスを設計する場合は、また別の物差し(速度・地域・既存の契約など)が入ります。唯一の正解を示すものではありません。

用語ミニ辞典

用語ミニ辞典

ホスティング
作ったアプリを、誰でもURLで使える状態にして置いておくこと。またはその場所を貸すサービス。
サーバー
プログラムを動かしたりファイルを配ったりする、向こう側のコンピューター。この教材ではVercelやCloudflareから借りているものを指す(自分で買うわけではない)。ただし「社内サーバー」だけは自社が持っている実機のことなので、区別する。
サーバー側の処理
置き場所のコンピューターの中で動く仕事のこと。ログイン、フォームの受け取りと保存、AIのAPIを呼ぶ、決済、人によって表示を変える——などが該当する。ここが無ければ、ページは「ただ表示されているだけ」=ブラウザ側で完結している。置き場所の判断はここで決まる。
ブラウザ側の処理
見ている人のスマホやパソコンの中で動く仕事。表示、開閉、その場での計算や変換など。相手の端末を借りているので、こちらの費用はかからない。
Vercelバーセル
Webアプリの置き場所を貸す会社。Next.jsの開発元でもあるため、Next.jsとの相性が最もよい。
Cloudflare Workersクラウドフレア・ワーカーズ
世界中にあるCloudflareの通信中継地点で、自分のプログラムを動かせる仕組み。速く、通信の送り出しが無料。
Netlifyネットリファイ
Webサイトやアプリの置き場所を貸す会社。Vercelに近い「Gitに送るだけで公開できる」体験が売りで、Next.jsも設定なしで置ける。2025年9月から料金の数え方を「クレジット」に作り替えた。
クレジットNetlifyの料金単位
Netlifyの新しい料金の数え方。毎月決まった点数が配られ、本番への公開(1回15)・データの送り出し(1GBで20)・Webリクエスト(1万回で2)・処理時間(メモリ1GB×1時間で10)に応じて減る。使い切るとサイトが止まる(無料プランは追加購入できない)。
「Webリクエスト」は「ページが見られた回数」ではありません。公式の定義に「HTMLページ、画像、JavaScript、CSSなどの静的ファイルへのリクエストも含む」と書かれているとおり、ページを1回表示すると画像やCSSへのリクエストも発生するため、1回の表示=1リクエストにはなりません。ページの作りによっては1回の表示で数十リクエストになることもあります。実際の数はブラウザに保存された分(キャッシュ)や外部サービスから読み込む分で変わるので、正確な数は管理画面の実測(Usage & billing の Web Requests)で確認してください。
Next.jsネクストジェイエス
Webアプリを作るときによく使われる道具(フレームワーク)。ページの切り替え・サーバー側での画面の組み立て・画像の最適化などが最初から用意された「部品セット」。AIにWebアプリを作らせると多くの場合これが使われる。
WordPressワードプレス
記事を書いてサイトを運用するための完成品のソフト。管理画面から更新できるのが特徴で、作る道具であるNext.jsとは役割が違う。PHPとデータベースが必要なため、置き場所はレンタルサーバーになる(VercelやCloudflareではない)。
Node.jsノードジェイエス
プログラムを動かすための一般的な土台。「普通のプログラムがそのまま動く」というときの「普通」がこれ。
リクエスト
利用者がページを開いたり、ボタンを押したりするたびに発生する「1回の呼び出し」。料金の数え方の単位になる。
データ転送(送り出し)エグレス
サーバーから利用者へデータを送る通信量。画像や動画が多いと大きくなる。Cloudflareはここが無料。
R2アールツー
Cloudflareのファイル置き場サービス。保管した量に対して課金され、取り出しは無料。
OpenNextオープンネクスト
Next.jsで作ったアプリを、Vercel以外の場所(Cloudflare・Netlify等)で動かせるように変換する道具。Netlifyは自社で作った版を自動で当ててくれるので利用者は意識しなくてよいが、Cloudflareでは自分で入れてバージョン追従も自分で追う——同じ道具でも手間が違う。
ドメイン
アプリの住所にあたる文字列(例:example.com)。別々の住所どうしの通信には制約がある。

SOURCES

元にしたカリキュラム/情報源

種類内容
カリキュラムMD新規テーマ(このHTMLが初出。対応する単一のMDはまだ未作成)
関連する教材AIに仕組みを作らせるコツ(作らせる前に決める3つ)/API・APIキー入門(従量課金・上限設定)/Claudeの契約とアカウントの選び方(トークン課金)
公式ドキュメント
(2026-08-08確認)
Vercel:Hobby Plan(非商用・個人利用の制限)/Fair Use Guidelines(商用の定義の原文・「制作に関わった誰かの金銭的利益」)/Pro Plan(月20ドル・シート・20ドルの利用枠)/Functions Limits(実行時間300秒・有料は設定で800秒/メモリ標準2GB・有料は設定で4GB)/Fluid compute pricing(2026-08-11追加確認・原文「Vercel bills Active CPU only while your code is actually running. If the request is waiting on I/O, CPU billing pauses but memory billing continues.」=待ち時間はCPU課金が止まるだけで、Provisioned Memoryの課金は継続する。旧版の「待ち時間は課金外」という記述はこの確認により訂正)Next.js on Vercel("deploying to Vercel is zero-configuration"/Next.jsはVercelがmaintain)Deployment Protection(外部IdPでのログイン限定=Passport は Enterprise のみ)
Cloudflare:Workers Pricing(無料枠・月5ドル・込みのリクエスト数)/Workers Limits(無料はCPU 1回10ms・メモリ128MB・平均2.2ms/認証やSSRは10〜20ms)Self-Serve Subscription Agreement(無料プランでのクレジットカード情報の処理禁止)/Workers Static Assets Billing(原文「Requests to static assets are free and unlimited.」/保管にも追加費用なし)/Workers Platform Limits(2026-08-11追加確認:静的アセットは1ファイル25MiB・ファイル数は無料20,000/有料100,000、無料プランのWorkersは1日100,000リクエスト=「無制限」なのは閲覧リクエストの回数であってプラットフォーム全体ではない)/R2 Pricing(取り出し無料)/Workers Node.js APIs(一部のみ対応・使えないモジュール)/Workers Next.jsガイド("local dev は Node.js・デプロイ先は workerd/本番に近い確認は preview コマンドで")・OpenNext(変換ツール/Cloudflare公式アダプタは2026年中に提供予定)/Cloudflare Access ポリシー("Emails ending in" で自社ドメイン限定・IdPグループ指定=Entra ID/Google等・ダッシュボードで設定)Cloudflare Tunnel("without a publicly routable IP address"・cloudflaredが外向き接続を張る・受信用のポートを開けない)
公式ドキュメント
Netlify
(2026-08-09確認)
プラン・価格docs.netlify.com/manage/accounts-and-billing/billing/billing-for-credit-based-plans/credit-based-pricing-plans/(Free=$0・300クレジット「hard limit」/Personal=$9・1,000/Pro=$20〜・3,000〜20,000=$126/Team members: Unlimited (included in plan)/Password protection=Proのみ/Private projects=Free・PersonalはOwner onlyでProはInvite unlimited members/プロジェクト上限500)
クレジットの単価と定義.../billing-for-credit-based-plans/how-credits-work/(本番デプロイ15/Deploy Preview・ブランチデプロイ0/Compute 10 per GB-hour/Bandwidth 20 per GB/Web requests 2 per 10,000/Forms free/AI inference 180 credits per $1。原文「This includes requests for HTML pages, images, JavaScript, CSS files, and other static assets.」=静的ファイルへのリクエストも課金対象原文「all of your web projects (sites/apps) are paused and visitors to your web projects will find a `Site not available` page」
課金FAQ.../billing-for-credit-based-plans/billing-faq-for-credit-based-plans/原文「if one site/web project exceeds its limits, all sites/projects on your account will be paused」/自動チャージは既定オフ・無料プランは購入不可/Credit Proはシート無料)
旧プラン(記事の数字の出所).../billing-for-legacy-plans/legacy-pricing-plans/原文「Starting on September 4, 2025, all new Netlify accounts will use the new credit-based pricing plans.」/レガシー=Free 100GB・ビルド300分・Pro $19/member)
関数の既定値・リージョン・メモリdocs.netlify.com/build/functions/configuration/(既定リージョンcmh=US East Ohio/東京nrt含む12リージョンに変更可だがPro・Enterprise/メモリ既定1024MB・1024〜4096MBの変更はCredit-based Pro/Enterpriseのみ/同期60秒・定期30秒・バックグラウンド15分・payload 6MB/20MB/原文「Each function runs in exactly one region.」
関数の課金docs.netlify.com/build/functions/usage-and-billing/(GB-Hour=実行時間×割り当てメモリ。待ち時間を除外する旨の記載は見つからず=本教材では「公式で確認できず」と表記
エッジ実行環境docs.netlify.com/build/edge-functions/overview//build/edge-functions/limits/(Denoベース・原文「from the worldwide network edge location closest to each user」/CPU 50ms・メモリ512MB・コード20MB・ヘッダ応答40秒/課金はcomputeでなくweb requests)
Next.jsdocs.netlify.com/build/frameworks/framework-setup-guides/nextjs/overview/原文「Netlify supports all major Next.js features with zero configuration, via our open-source OpenNext adapter」/SSR等はFunctions・MiddlewareはEdge Functionsに自動割り当て/制限=Edge Runtime指定のSSRも関数リージョンでNode.js実行・Netlify FormsはNext.jsで追加コードが必要)
アクセス制限docs.netlify.com/deploy/protect-deploys//manage/security/secure-access-to-sites/password-protection/Basic password protection=Proプラン/SSO(SAML)=Enterpriseプラン/team login protectionはNetlifyチームのメンバーのみ)
Gitデプロイ・プレビューURL:全プランで「Unlimited Deploy Previews」「Live preview URLs」(credit-based-pricing-plans)+プレビューはクレジット消費0(how-credits-work)
規約(無料プランの商用可否)netlify.com/legal/self-serve-subscription-agreement/"non-commercial"・"personal use" 等の語は文書中に無い=Vercelのような商用禁止条項は確認されず。第6条 Free Usage Tier=原文「the Free Usage Tier is offered at Netlify's sole discretion」「Netlify may shut down Free Usage Tier website projects without notice for any reason or no reason」「with no service level commitments」)/netlify.com/legal/acceptable-use-policy/原文「Any user deemed to be using Netlify Services solely as a remote storage server will have their account immediately terminated」
ファイル保存(Netlify Blobs)docs.netlify.com/build/data-and-storage/netlify-blobs/(ベータ・全プランで利用可。保管料金と取り出し(egress)の単価は公式に記載を確認できず=本教材では「公式で確認できず」と表記
※第8章の「300クレジットで何ができるか」「1GBあたり約0.13ドル」は、公式が示す単価からこちらで計算した換算値です(公式が金額として公表している数字ではありません)。
数字の扱いについて 料金・無料枠・上限値は3社とも改定が多い領域です。この教材の数字は、VercelとCloudflareが2026年8月8日、Netlifyが2026年8月9日に公式ドキュメントで確認したものですが、実際に契約する前には必ず公式サイトで最新を確認してください。この教材は「どう考えて選ぶか」の判断軸として使うのが正しい使い方です。

Netlifyが2025年9月に料金の考え方ごと作り替えた(第8章)のは、その実例です。解説記事の数字は改定に追いつかないまま残ります。数字を拾う場所は、記事ではなく公式の料金ページ——これは3社すべてに当てはまります。