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脱・属人プログラム — 学習ノート

サブエージェント入門
— 面倒な作業は「別室」に出す

— 散らかる作業を裏でやらせて、結論だけ受け取る

Claude Codeに最初から備わっている「サブエージェント」。裏で別のAIを立ち上げて作業させ、あなたの会話には結論だけを持ち帰る仕組みです。何がうれしいのか、どう使うのか、そのサブエージェントの“指示書”はどこにあるのか——非エンジニアのための入門ノート。

2026.07.26 作成 / 2026.09.09 更新 / Claude Code の標準機能を対象

この話の結論(3つだけ)
  1. サブエージェント = 裏で動く「別のチャット(別のAI)」
    散らかる作業を別室でやらせて、結論だけを本体の会話に持ち帰る
  2. だからメインの会話がきれい・速い・集中が続く
    調べ物や大量の読み込みで、あなたの会話が埋まらない
  3. 使い方は「正しいフォルダで開いて、普通に頼む」だけ
    難しい設定はいらない。大きい作業・並行したいときに効く

第1章

サブエージェントとは — 別室で働くもう一人のAI

「サブエージェント」は、Claude Codeに最初から備わっている機能です。ひとことで言うと、面倒な作業を“別室にいるもう一人のAI”に丸投げして、結論だけ受け取る仕組みのこと。

ふだんあなたが話しているのが「本体のAI」。そこから「これ調べておいて」と別のAIに振ると、そのサブエージェントが裏で(あなたには見えない別のチャットで)作業して、要点だけを報告しに戻ってきます

たとえるならあなたは会議室(メインの会話)にいる。込み入った調べ物は、別室にいるもう一人にお願いして、結論をまとめた紙1枚だけ持ってきてもらう。会議室の机は、資料の山で埋まらずに済む。

大事なのは、このサブエージェントがあなたとは別のAIで、自分専用のまっさらな記憶を持っていること。本体とは記憶を共有せず、作業が終わると結論だけ報告して、その別チャットは消えます(散らかった中身ごと片付く)。

よくある誤解❌「1人のAIが、机を移動しながら作業している」ではありません。⭕「別のAIが、別の机(別チャット)で作業して、結果だけ渡しに来る」が正解。画面が1つなので同じチャットに見えるだけで、裏では別のチャットが立ち上がっています。
あなたのチャット(見える) └─ サブエージェントを呼ぶ → 別チャットA(見えない・調べ物) → 結論だけ返して消える └─ サブエージェントを呼ぶ → 別チャットB(見えない・文章の校正)→ 結論だけ返して消える

図1|サブエージェントは別室(別チャット)で働き、結論だけ持ち帰る

第2章

普通のチャットとの違い — 机が散らからない

いちばんの価値は「あなたの会話(机)が散らからない」ことです。ここを普通のチャットと比べます。

普通のチャット(自分の机で全部やる)サブエージェント(別室に出す)
作業の場所調べた資料も途中経過も、全部あなたの会話に積み上がるサブエージェントが別室で散らかしながら作業する
返ってくるものやり取りの全部が画面に残る結論の紙1枚だけが返る
その結果やるほど散らかって本筋が埋もれ、AIも情報過多で集中力が落ちる・前の話を忘れるあなたの会話はきれいなまま・速い・集中が続く
「机」とはAIの記憶の広さ(容量)のこと。容量には限りがあり、散らかると遅く・高く(コスト増)・抜け漏れが増える。それを防ぐのがサブエージェント最大の value(値打ち)です。

さらに、普通のチャットは1つずつしか進められませんが、サブエージェントは複数のサブエージェントを同時に走らせられます。「Aを調べるサブエージェント」と「Bを校正するサブエージェント」を並行で動かして、終わった順に結論を受け取る——という使い方ができます。

第3章

使い方 — 正しいフォルダで開いて、普通に頼む

身構える必要はありません。やりたいことを普通に伝えるだけです。

頼み方どういうことか
① ふつうに頼む
何も意識しない
Claude Codeが勝手に判断して使う
「この資料を全部読んで要点だけまとめて」→ 重いと判断したら自動で別室に出す
② 別室に出せと言う
確実に出したいとき
こちらから一時的に頼む
「サブエージェント使って調べて」→ その場かぎりで別室に出す
③ サブエージェントを作っておく
同じ仕事をくり返すとき
スキルや知識を持たせたサブエージェントを、保存しておく
一度作れば「台本作って」だけで起動。5本同時に走らせることもできる
Coworkタブではどうなる?①は動きます。Coworkはもともと「仕事を小さく分けて並列で進める」作りだからです。
ただし③は効きません。自分のパソコンの ~/.claude/agents/ に置いたサブエージェントは、Coworkからは見えないためです。Coworkが読むのはclaude.aiアカウントと同期する「Customize」の設定(スキル・プラグイン・コネクタ)で、パソコン内のフォルダではありません。
Coworkにも自作のサブエージェントを持ち込みたい場合は、プラグインにまとめる必要があります。この教材の以降の話は Code タブが前提です。

①と②はその場かぎり、③は作って残しておくやり方です。同じ仕事をくり返すなら③が本命になります。毎回ゼロから説明しなくてよく、品質もブレません。

育て方の順番まず①で試す(準備ゼロ)→ 何度も頼むようになったら③で保存する使いながら直す。いきなり作り込まなくて大丈夫です。
作り方は第4章、呼び出され方は第6章、いつ作るべきかの目安は第7章で扱います。
向き・不向きちょっとした質問や短い修正は、サブエージェントを呼ぶひと手間のぶん、普通にチャットした方が速いです。サブエージェントが効くのは大きい作業・調べ物が多い・複数を並行したいとき。「なんでも別室」ではなく、重い仕事を出すイメージです。

「作業フォルダ」に注意 — どの画面から使っても同じ話

サブエージェントには、2種類あります

サブエージェントの種類どこで使えるか
最初から備わっているサブエージェント
(調べ物係など。何も用意しなくても使える)
どのフォルダでも使える
自分で作った案件専用のサブエージェント
(作り方は第4章)
その案件のフォルダで作業しているときだけ

ですので、フォルダを間違えても機能そのものが消えるわけではありません。変わるのは次の2つだけです。

  1. サブエージェントに見える範囲。サブエージェントが読めるのはそのフォルダの中身だけです。違うフォルダで作業していると、本来見るべきファイルが見えないまま、見当違いの作業になります。
  2. 案件専用のサブエージェントが出てくるかどうか。その案件のフォルダで作業していないと、専用に作ったサブエージェントは呼び出せません。

その「作業フォルダ」は、どこで決まるのか

画面によって決め方が違うだけで、考え方はどれも同じです。1つのチャットにつき、担当するフォルダが1つ決まっている——これだけです。

使っている画面作業フォルダの決まり方
デスクトップ版新しいチャットを作るときに「プロジェクトフォルダ」を選ぶ。そのチャットは最後までそのフォルダを担当する
VS Code「フォルダを開く」で開いているフォルダ
ターミナル(黒い画面)Claude Codeを起動したときにいたフォルダ
デスクトップ版で気をつける点デスクトップ版はチャットごとに担当フォルダが決まっています。そのため、途中で別の案件の話を始めてもフォルダは切り替わりません。案件が変わったら、そのフォルダを選んで新しいチャットを作り直すのが正解です。
いま何を担当しているかは、チャット名の右横に出ている小さなフォルダ名(例:dev)で確認できます。
合言葉正しいフォルダで始める → あとは普通に頼む」。これだけ覚えておけば大丈夫です。

第4章

サブエージェントの“指示書”はどこにある?(.mdファイル)

「調べ物係」「台本を書く係」といった専門のサブエージェントは、どんな役割で・何をしていいかという指示書を持っています。その正体は、1枚のテキストファイル(.md)です。特別なアプリは要りません。

置き場所は2種類 — ここで「どこから呼べるか」が決まる

置き場所どこから使えるたとえ
プロジェクトの中
.claude/agents/
そのフォルダを開いたときだけ現場に置く専用マニュアル
全体共通
~/.claude/agents/
どのフォルダでも道具箱に入れて持ち歩くマニュアル

これは教材「AIの第二の脳を作る」で出てきた「コーポレート(.claude)=どこでも効く/事業部(dev)=その案件だけ」の分け方と、まったく同じ考え方です。全社で使うサブエージェントは道具箱(~/.claude)へ、その案件専用のサブエージェントはプロジェクトの中へ置きます。

【あなたのPC】 📁 C:\Users\〈名前〉\.claude\ ← AI専用の道具箱(どのフォルダでも効く) ├─ 📁 skills\ ──────── AIの道具(スキル) └─ 📁 agents\ ─────── 全体共通のサブエージェントの指示書 ← どの案件でも呼べる └─ 📄 researcher.md 📁 C:\dev\プロジェクトA\ ← その案件の作業フォルダ └─ 📁 .claude\ └─ 📁 agents\ ── この案件専用のサブエージェント ← このフォルダを開いた時だけ呼べる └─ 📄 script-writer.md (GitHubでコードと一緒に共有できる=チーム全員が同じサブエージェントを使える)

図2|サブエージェントの指示書の置き場所 — 道具箱(全体)か、プロジェクトの中(その案件だけ)か

指示書の中身(実物のイメージ)

ファイルの中身は、上が設定・下が指示本文という決まった形です。上の設定部分(区切り線 --- で囲む)に、名前・役割の一言説明・使ってよい道具などを書きます。

--- name: script-writer # サブエージェントの名前 description: 動画台本を書く専門のサブエージェント。テーマを渡すと台本を作る # どんな時に呼ぶか tools: Read, Write, WebSearch # 使ってよい道具(例:読む・書く・Web検索) model: sonnet # どのモデルに担当させるか(任意) --- あなたは動画台本づくりの専門家です。 ← ここから下が“指示本文” 渡されたテーマについて、視聴者に分かりやすい 構成で台本を書きます。

図3|指示書(.md)の中身 — 上が設定、下が「あなたは〇〇の専門家です」の本文

tools(使ってよい道具)で「このサブエージェントは読むだけ・書き込み禁止」といった制限もかけられます。役割を絞った安全なサブエージェントを用意できるわけです(→ 第8章で詳しく)。

道具(tools)と手順書(skills)は別もの

指示書には skills(スキル)という項目も書けます。tools と名前が似ていて混ざりやすいので、整理しておきます。

項目渡すものたとえるなら
toolsできること(読む・書く・検索する)ハサミやペンなどの道具
skills決まったやり方(手順)業務マニュアル

skills に書いておくと、そのサブエージェントは起動した瞬間から、その手順を頭に入れた状態で始まります。毎回ゼロから説明しなくて済む、ということです。

つまずきやすい点tools の中に Skill が入っていないと、そのサブエージェントはスキルを一切使えません。「スキルを使わせたいのに動いてくれない」ときは、たいていここが原因です。

作らせ方 — こう頼めばいい

この .md を手で書く必要はありません。ふつうの日本語で頼めば、AIが中身を組み立ててファイルまで用意してくれます。いちばん短い頼み方はこれです。

動画台本を書くサブエージェントを作って

これだけでも作れます。ただし細かいところはAIが勝手に決めるので、あとで直すことになります。最初に4つだけ添えると、直しがぐっと減ります

添えることなぜ効くのか指示書のどこになるか
① 何をする係か役割と手順が決まる本文
② 自分が言いそうな言葉これで呼び出される。名前を覚えなくてよくなる(第6章)description
③ やらせないこと道具を減らして事故を防ぐ(第8章)tools
④ どこに置くかどこから呼べるかが決まるファイルの置き場所

実際の依頼文にすると、こうなります。そのまま真似できる形で載せておきます。

裏取りをしてくれるサブエージェントを作って。全体共通に置いて。 ← ④どこに置くかやること:渡した文章の数字や主張を、公式サイトなど ← ①何をする係か 元の情報に当たって1件ずつ確認し、○×の表で返す ・呼び方:「裏取りして」「これ本当?」「この数字合ってる?」 ← ②言いそうな言葉 でも呼び出せるようにして ・やらせないこと:文章の書き換えは禁止。指摘だけ ← ③やらせないこと使いすぎ防止:1件につき検索は2回まで。見つからなければ ← あれば添える 「確認できず」と書いて次へ進む

図4|依頼文の例 — 箇条書きで渡すだけでよい

決まった手順があるならこの手順書どおりにやらせて」とスキルを指定すれば、起動した時点でその手順を頭に入れた状態にできます(skills)。社内の決まったやり方がある仕事は、これを添えると毎回の説明が要らなくなります。

作ったあとの直し方

できあがったサブエージェントは、使いながら直します。直すときも、ファイルを開く必要はありません。

困ったことこう言えばいい
頼んだのにサブエージェントが動かない“〇〇して”という言い方でも反応するようにして
勝手に書き換えてしまうこのサブエージェントは書き換えできないようにして
調べすぎて時間と費用がかかる調べる回数に上限をつけて
報告の形がバラバラ毎回この形の表で返すようにして
一度で完成させない最初から完璧な指示書を目指す必要はありません。まず作って、使って、外れたところを直す。とくに「毎回おなじ注意を言い足している」と気づいたら、その注意こそ指示書に足すべき中身です(第7章)。
はじめて作ったときだけサブエージェントの置き場所(agents フォルダ)をその時はじめて作った場合は、アプリを再起動しないと認識されません。2体目以降は再起動不要で、数秒後には使えます。「作ったのに呼べない」ときは、まずここを疑ってください。
同じ名前があったら(参考)全体共通とプロジェクトの両方に同じ名前のサブエージェントがあると、そのフォルダに近い方(プロジェクトの中)が優先されます。案件ごとに“標準のサブエージェントを上書きした専用版”を用意できる、という仕組みです。

第5章

別室の様子を見る — 「今なにしてる?」を確認する

サブエージェントは別室で働くので、そのままだと中で何をしているのか見えません。「変な方向に進んでいないか」「まだ終わらないのか」は気になるところです。

デスクトップ版のClaude Codeなら、画面の右側に稼働状況を出しておけます

出し方

  1. 画面右上のツールバー(アイコンが並んでいるところ)から Views(表示) を開く
  2. 「バックグラウンドタスク」を選ぶ
  3. 出てきた区画の見出しをドラッグすれば、右端に置いて常時表示にできる

サブエージェントが動き出すと、入力欄の下にも「◯件の実行中タスク」というリンクが出ます。そこを押しても同じものが開きます。

バックグラウンドタスク 実行中 資料を調べる係 ← サブエージェントの名前(依頼内容から自動でつく) エージェント 28s ← 種類と経過時間 31.5k トークン 4回のツール使用 ← 使った量と、作業した回数 トランスクリプトを表示 ← ここを押すと「今なにをしているか」が読める [□] ← 押すと、このサブエージェントだけ止められる 完了 1← 終わったものはここにたたまれる

図5|バックグラウンドタスク — 別室の様子はここで見る

複数のサブエージェントを同時に走らせても同じ一覧に並びます。誰がどこまで進んでいるかが一目で分かり、おかしいと思ったら個別に止められます。「丸投げしたきり戻ってこない」という状態にはなりません。

似ているが別のものここに出るのは「今開いているチャットの中で動いているサブエージェント」だけです。別のチャットが何をしているかは、ここではなく左のサイドバー(チャット一覧)で見ます。混同しやすいので注意。
出てこないときはこの表示は比較的新しい機能です。アプリが古いと Views に項目自体が出ません。その場合はヘルプ → 更新を確認でアップデートしてください。

第6章

名前は覚えなくていい — 呼び出しを決めるもの

専門のサブエージェントを作ると名前が付きますが、その名前を覚える必要はありません。「この仕事はこのサブエージェントだ」と判断しているのは、指示書の description(役割の一言説明)だからです。

たとえるなら仕事を振るとき、社員の氏名ではなく「経理担当」という肩書きを見て決めている。だから頼む側は肩書きの言葉で言えばよく、氏名を暗記する必要がない。

ということは、description「自分が言いそうな言い回し」を書いておけばいいわけです。

description: 裏取り(ファクトチェック)担当。 「裏取りして」「これ本当?」「この数字合ってる?」 ← 実際に言う言葉を並べておく 「ソース確認して」などと言われたら必ず使う。 他のAIが出した文章や数値を、原典に当たって1件ずつ 検証し、判定表を返す。書き換えは一切しない。

図6|description には「自分が言いそうな言い方」を書いておく

こうしておけば、「これ本当?」と普通に聞くだけでサブエージェントが動きます。逆に description が「ファクトチェッカー」の一言だけだと、呼ばれるべき場面で呼ばれません。

呼ばれなかったら頼んだのにサブエージェントが動かなかったら、その言い回しが description に無いだけです。「今の言い方でも反応するようにして」と頼めば1行足されます。使いながら育てるのが正しい付き合い方です。

なお、スキルもまったく同じ仕組みで呼び出されます。/コマンド名 を覚えていなくても、普段の言葉で発動します。

第7章

いつ「専門のサブエージェント」を作るのか

サブエージェントには2通りあります。その場で頼むだけのサブエージェントと、指示書(.md)を用意した専門のサブエージェントです。作り込む前に、線引きを押さえておきます。

その場で頼むサブエージェント指示書を作ったサブエージェント
指示の出どころその時に伝えた数行用意したファイル(数十〜百数十行)
毎回同じか頼み方しだいでブレるいつも同じ
失敗を学べるかその場限り。次には残らない書き足せば次から効く
チームで共有できないGitHubで全員に配れる
準備の手間ゼロ最初に作る手間がある

決定的な違いは「積み上がるかどうか」です。その場のサブエージェントは、注意点を毎回自分で言い足さないと反映されません。つまり言い忘れたら、その回は無防備になります。

指示書を作るサイン次のどちらかに当てはまったら、作りどきです。
同じことを3回以上頼んだ
毎回おなじ注意を付け足している(「消さないでね」「出典も付けて」など)
とくに②は、その注意こそが指示書に書くべき中身です。
最初から完璧を目指さない指示書は一度で仕上げるものではありません。まず1体だけ作って使ってみて、外れたところを直す。この繰り返しで精度が上がります。作成も修正もAIに頼めるので、「ここを直して」で済みます。

第8章

事故とムダを防ぐ — 道具を減らす、予算を決める

「気をつけて」ではなく「持たせない」

サブエージェントには tools で道具の制限をかけられます。ここは脱・属人の考え方がそのまま出る部分です。

たとえば「書いた文章をチェックする係」には、読む道具だけ渡して、書き込む道具を渡しません。すると指摘はできるが、勝手に書き換えることが物理的にできなくなります。「余計なことはしないでね」とお願いするのではなく、できない状態にしておく——これが人ではなく仕組みで守るということです。

書く係チェックする係
読む(Read)
書く(Write)❌ 渡さない
Web検索用途しだい

書く係とチェックする係は、分ける

自分が書いたものを自分で見直しても、間違いは見つかりません。これはAIも同じです。実際に、自分の書いた文章をAIに4周チェックさせても35件の違反が残ったという実測があります。「もう直したはず」という思い込みが働くためです。

効くやり方経緯を知らない別のサブエージェントに読ませる。どう書いたかを知らないので、思い込みなしで読めます。職場で校正を別の人に頼むのとまったく同じ理屈です。
チェック係のクセ検証を頼まれたサブエージェントは、数件だけ調べて「問題ありません」と言いがちです(Claude Codeの公式ドキュメントでも注意されています)。指示書に「最後の1件まで判定を付ける。確認できなかった分も“確認不能”として必ず残す。黙って省略しない」と書いておくと防げます。

使いすぎを防ぐ — いちばん効くのは「上限を決める」

サブエージェントを動かすほど費用はかかります。抑える方法は4つありますが、効き目には大きな差があります

手段書き方効き方
① 調べる量の上限指示書の本文に
「1件につき検索は2回まで」など
いちばん効く。読み込む量そのものが減る
② 担当モデルmodel: sonnet単価が下がる
③ 考える量effort: medium考えすぎを防ぐ
④ 打ち切りmaxTurns: 40暴走したときの保険
なぜ①が一番効くのか費用の大半は「読み込んだ資料やWebページの量」で決まります。担当を安いモデルに変えても、読む量そのものは減りません。だから「何回まで調べてよいか」を先に決めておくのが、いちばん確実です。

とくに調べ物のサブエージェントは、放っておくと「見つからないもの」を延々と探し続けます。「1〜2回探して見つからなければ“確認できず”と報告して次へ進む」と書いておくだけで、ムダが大きく減ります。

第9章

メリットまとめと、向き・不向き

メリットどういうこと
① 会話が散らからない調査や大量のファイル読みを“別室”でやり、結論だけ受け取る(最重要)
② 同時に動かせる(速い)普通のチャットは1つずつ。サブエージェントは複数を並行で走らせられる
③ 役割を持たせられる「調べ物係」「校正係」など専門のサブエージェントを用意でき、道具の制限もかけられる
④ メインが賢いまま余計な情報で気が散らず、本筋の判断の精度が保てる
知っておくと安心な“クセ”サブエージェントは毎回まっさらな状態から始まります。あなたと本体の会話でそれまで話した内容を、サブエージェントは自動では知りません。だから込み入った作業を頼むときは、「〇〇という前提で」と背景も一緒に渡すとうまくいきます。これは欠点というより、机を分けているからこその仕様です。
ひとことでサブエージェント=裏で立つ別チャット。散らかる作業を出して結論だけ受け取る。だから速い・きれい・集中が続く。使い方は「正しいフォルダで開いて、普通に頼む」だけ

実例

組み上がった実物 — 台本を4本まとめて書かせる「編集部」

ここまでは部品の説明でした。最後に、実際に毎週動いている一式を丸ごと見ておきます。一度頼むと、動画の台本を4本まとめて書き上げる仕組みです。特別なものは1つも使っていません。これまでに出てきた部品を、置き場所どおりに並べただけです。

ファイルは5つ。3つの層に分かれている

📁 C:\dev\(案件のフォルダ)\ │ ├─ 📄 CLAUDE.md 4行 【常時】このフォルダを開いた瞬間から効く ├─ 📄 AGENTS.md 529行 【常時】この案件のルール本体 │ └─ 📁 .claude\ ├─ 📁 skills\台本チーム\ │ └─ 📄 SKILL.md 295行 【呼ばれた時】進行マニュアル └─ 📁 agents\ ├─ 📄 ライター.md 145行 【起動された時】書く人の職務記述書 └─ 📄 レビュアー.md 81行 【起動された時】見る人の職務記述書

図7|実際に動いているファイル一式 — 置き場所そのものが役割を決めている

3つの層の違いは「いつ頭に入るか」だけ

中身の書き方はどれも同じ「ただのテキスト」です。違うのは読み込まれるタイミングで、ここさえ掴めば使い分けで迷いません。

いつ頭に入るか誰の頭に入るかたとえるなら
CLAUDE.md
AGENTS.md
常に(開いた瞬間)メインのAI社則(机の上に出しっぱなし)
SKILL.md頼まれた時だけメインのAI進行マニュアル(必要な時に棚から出す)
agents\ の .mdその人が起動した時だけサブエージェント本人職務記述書(本人だけが持つ)

3つめが特に大事です。ライターの指示書は、メインのAIの頭には入っていません。ライターが起動した瞬間に、本人の頭にだけ入ります。だからメインの会話は最後まで散らかりません。

実物を見て驚くところこの CLAUDE.md4行しかありません。中身は実質 @AGENTS.md の1行だけで、本体は隣の AGENTS.md(529行)にあります。なぜ分けたかAGENTS.md は他社のAIツールも読みにくる共通の名前だからです。ルールの本体は1つにして、Claude Code用には入口だけ置く。こうすると、ツールを乗り換えても指示を書き直さずに済みます。

一度頼むと、何が起きるか

あなた「台本を4本作って」 ↓ 編集長(メインのAI) CLAUDE.md と AGENTS.md は最初から頭にある │ SKILL.md を開いて段取りを確認 │ ├─ ① まず1人だけ起動して確かめる ← いきなり4人出さない │ ライター … ライター.md が本人の頭に入る │ → 指示どおり素材を自分で読む │ → 台本を書いて提出し、消える │ ├─ ② 構成案だけを先にあなたに見せる ← 本文4,000字を書き切る前に方向を確認 │ ├─ ③ 残り3人を同時に起動 ← ①と同じことが3回、並行して起きる │ └─ ④ 最後にレビュアーへ渡す ← 経緯を知らない第三者に見せる

図8|一度の依頼で起きること — 「まず1人で試す」「途中で見せる」が事故を防ぐ

まねしてほしい2つの工夫①いきなり全員を起動しない。指示書に問題があった時、4人ぶんまとめて無駄になるからです。②本文を書き切る前に構成だけ見せる。直しがいちばん重くなるのは表現ではなく方向性で、それは書く前なら数分で直せます。

なぜ skills の欄を使っていないのか

第4章で、指示書には skills(手順書)も書ける、と説明しました。ところがこのライターの指示書は skills使っていません。代わりに指示本文の中で、起動したら必ずこれを読め、とファイルを名指ししています。

## 起動時に必ず読むファイル(順序固定) 1. CLAUDE.md … この案件のルール 2. content-prompt.txt … 書くときの原則 3. domain-facts.md … 業界の事実集(ここに反する記述は禁止) 4. examples\ の最新3件 … お手本の完成品 5. (AIメモリのスタイルガイド) … 口調・粒度の好み ※メモリの置き場はPCごとに変わるので、自分の環境のパスを書く

図9|ライターに読ませているもの — 5つとも「手順書」ではなく「素材」

理由は並べてみると分かります。5つとも手順書ではありません。お手本の完成品、業界の事実、口調の好み——すべて材料です。

ここが分かれ目skills の欄に書けるのはスキル(手順書)だけです。お手本ファイルや事実集は指定できません。読ませたいものが手順書ならスキル欄、材料なら指示本文で名指し——これが使い分けです。

安全のしかけも、この中に入っている

第8章の「気をつけてと言うのではなく、持たせない」も、同じ指示書の中で実行されています。

tools: Read, Write, Glob, Grep, WebSearch, WebFetch ← 渡す道具はこれだけ ## 絶対に読まない・触れないファイル ・.env / .env.* (APIキーが入っている) ・settings.json (Claude Code本体の設定) ・*.key / *.pem / credentials 系

台本を書くのに関係のないファイルは、そもそも触らせない。道具を絞ったうえで、危ないものは名指しで禁止する。この2段構えです。

ひとことで特別な仕組みは何もありません。常に効くもの=CLAUDE.md/頼んだ時だけ=スキル/その人だけ=職務記述書。この3つを置き場所どおりに並べれば、あなたの仕事にも同じ編集部が作れます。

補足

「エージェントチーム」との違い

似た言葉にエージェントチーム(Agent teams)があります。どちらも「AIを複数動かす」仕組みですが、中身はかなり違います

サブエージェントエージェントチーム
やり取り親に結果を返すだけ。助手同士は話さないメンバー同士が直接やり取りする。共有のタスク表を取り合う
人間との関係親を通す個々のメンバーに直接話しかけられる
費用(トークン)少なめ。結果だけ戻るかなり多い。1人ずつが独立したClaude
向いている仕事結果だけ欲しい作業(調べ物・下読み)議論に価値がある仕事(レビュー・仮説の検証)
ひとことで サブエージェント=使いに行かせる。エージェントチーム=会議をさせる
「調べてきて」ならサブエージェント。「3人で別々の仮説を立てて、互いに否定し合って」ならチームです。
まずサブエージェントから エージェントチームは実験的な機能で、既定はオフです。有効にすると頼んでいないのにチームが組まれることがあり(Claudeが名前を付けた助手が自動的にメンバーになる)、セッションを再開するとメンバーが復元されないなどの制限もあります。トークンも大きく増えます。
迷ったら、まずサブエージェントを使いこなすのが正解です。チームは「並行して調べさせて、意見を戦わせたい」という具体的な必要が出てきてからで十分です。

もし試すなら — 先に知らないと必ずハマる4つ

実際に動かして確かめた内容です(2026-09-11)。この4つを知らずに始めると、「オンにしたのに何も起きない」で止まります。

① いつものチャット欄からは動かない Claude Code のチャットのパネル(VS Codeの右側や、デスクトップアプリの入力欄)からは、設定をオンにしてもメンバーが立ちません
使うのはターミナル(黒い画面。VS Codeの下側にあるタブでも同じ)。そこで claude と打って起動した画面でだけ動きます。
分かれ目は「VS Codeかどうか」ではなく、誰がClaudeを起動したかです。自分でキーボードから claude と打ったならOK、拡張機能がプログラムとして呼び出したならNG。同じVS Codeの中でも、下のターミナルタブなら立ちます。公式には「対話セッションが必要」と書かれています(なぜ必要かまでは書かれていません)。定期実行や自動化でも同じ理由でメンバーは立ちません(=いま動いている自動化が勝手にチーム化する心配はない、という安心材料でもあります)。
たとえるなら ターミナルは、相手の部屋のドアを開けて直接話している状態。部屋の中にいるので、机を足して人を座らせられます。
チャットのパネルは、間に秘書が立っている状態。言葉を伝えて返事を持ってきてくれるので会話は成立しますが、あなたは部屋の中に入っていません。だから「机を増やして」という指示が通りません。
② 設定を書く場所を間違えると、効かない/効きすぎる オン・オフは .claude/settings.json に1行書くだけですが、置き場所で結果が変わります
置き場所どうなるか
試したいフォルダの中○ 正解。そのフォルダで作業しているときだけ効く
ひとつ上の階層(親フォルダ)✗ 効かない。設定ファイルは親フォルダを遡って読まれない
全体共通(~/.claude/settings.json✗ 効きすぎる。どの案件を開いてもオンになり、頼んでいないのにチームが組まれる
ここは CLAUDE.md と挙動が違うので間違えやすいところです。CLAUDE.md は親フォルダのものも読まれますが、settings.json は読まれません。「上の階層に置いたのに効かない」はこれが原因です。
③ 「設定はオンです」では確認にならない 設定がオンでも、①の条件を満たしていなければメンバーは立ちません。オンかどうかを聞いても判定できないということです。
見るのは画面の表示です。依頼を投げたあとに 2 teammates started(メンバーが2人立った)のような表示が出れば本物。出ずに助手のブロックが縦に並ぶだけなら、それはただのサブエージェントです。
見分けの決め手がもう1つ。メンバーがさらに別の助手を起動したら、それはチームではありません。チームのメンバーは自分の下に助手を作れない決まりだからです。
④ メンバーの“指示書”はサブエージェントと同じ場所 チーム専用の置き場はありません。.claude/agents/ に置いた同じ指示書を、サブエージェントとしてもメンバーとしても使い回します。「一度書けば両方で使える」ということです。
なお ~/.claude/teams/ というフォルダが作られますが、これは動作中の状態を記録するだけの場所です。手で書き換えないでください(次の更新で上書きされます)。
実際に議論するのか? 2人に「AIへの指示は細かくすべきか、ざっくりすべきか」を討論させたところ、途中で「反論しようとして相手の文章を読み込んだ結果、実は同じことを言っていた」と気づいて論点が絞られました。最後は片方が「〜と明記するなら同意する」と条件付きで折り合って終わっています。
1人のAIに「賛成と反対の両方を出して」と頼んでも、この収束のしかたはまず出てきません。ここがチームの価値です。
ただし正直に言うと、出てきた結論そのものは1人のAIでも出せる水準でした。題材が易しかったためです。チームが本当に効くのは、答えが割れて利害が絡む問いのときです。

まとめ

4行でおさらい

サブエージェント、これだけ
  1. 裏で動く「別のAI」に重い作業を出し、結論だけ受け取る仕組み
    会話が散らからず、速く、複数を並行できる
  2. 使い方は「正しいフォルダで開いて、普通に頼む」だけ
    大きい作業・調べ物・並行に効く。小さな用事は普通のチャットが速い
  3. 専門のサブエージェントの“指示書”は .md ファイル
    全体共通は ~/.claude/agents/、案件専用はプロジェクトの .claude/agents/。作成はAIに頼めばOK
  4. 名前は覚えなくていい。様子は右側で見られる
    呼び出しは肩書き(description)で決まる。稼働中のサブエージェントは「バックグラウンドタスク」で確認・停止できる

この教材の元にしたカリキュラムMD(内容を直すときはこちらも直す):
setup/claude-code/サブエージェントとは.md(本体)
・(関連)配布資料/second-brain.html(.claude と dev の分け方)/配布資料/slash-commands.html(コマンド地図)
・公式ドキュメント:Claude Code Docs「Subagents」(code.claude.com/docs・2026-07 確認)で置き場所・フロントマター・呼び出し方を裏取り
2026-08-20 追記分(第5〜8章・第4章の tools/skills)の裏取り元:公式ドキュメント「Subagents」(設定項目 modeleffortmaxTurnsskills、検証エージェントの注意点)/「Desktop application」(バックグラウンドタスクの表示)/「Best practices for Claude Code」(いずれも code.claude.com/docs・2026-08-20 確認)

2026-09-09 追記分(実例の章)の元:実際に稼働している動画台本の生成一式(CLAUDE.md+AGENTS.md/スキル1本/サブエージェント2体)を、そのまま構成図に起こしたもの。個人のフォルダ名・メモリの保存先など環境ごとに変わる部分は伏せ、機能で表記している

2026-09-11 追記分(補足「先に知らないと必ずハマる4つ」+討論の実例)の元:公式ドキュメント「Agent teams」(code.claude.com/docs/en/agent-teams)と「Settings」(.../en/settings・設定ファイルが親フォルダを遡らない件)を 2026-09-11 に確認。加えて実機で検証=チャットのパネルではメンバーが立たず、ターミナルから起動した場合のみ立つことを 2 日にわたって対比確認し、討論の中身も実際に走らせて記録した