脱・属人プログラム — 学習ノート
— 一人の“保険”から、チームの“共有の脳(ハブ)”へ
第二の脳(CLAUDE.md+memory+skillsをGitHubの非公開リポに保管)は、仕組みを変えずにそのままチーム運用へ伸ばせます。作り直しは不要。変えるのは“運用ルール”だけ——非エンジニアのための、会社・複数PCで安全に回す手引き。
2026.07.16 作成 /「AIの第二の脳」の続編(会社・チーム運用編)
CHAPTER 1
一人で第二の脳を使うと、GitHubの役割は保険です(PCが壊れたら戻す)。これを会社・チームで使うと、同じ仕組みのまま「みんなの共有の脳(ハブ)」に格上げできます。GitHubはもともと大勢で1つの物を共有するための道具なので、作り直しはいりません。
| 一人PC(保険) | 複数PC・会社(共有の脳) | |
|---|---|---|
| GitHubリポの役割 | 壊れたら戻すバックアップ | 全員の脳が集まるハブ(本体) |
| 各PCの動き | 主に「上げる」だけ | pull で受け取る/push で返す |
| 仕組みの変更 | — | なし(同じリポ・同じコマンド) |
| 変えるのは | — | 運用ルールだけ(この後の3つ) |
FIG. 中央に共有リポ、各PCがpull/pushでつながる
CHAPTER 2
共有の脳に鍵やログイン情報を絶対に入れないこと。1回の不用意な操作で全員に鍵が漏れるからです。一人運用よりも、会社運用のほうがこの事故は致命的になります。
| GitHubに上げてよい(それぞれの控えリポへ) | 上げない(各PCにローカルで残す) |
|---|---|
| 会社ルール(CLAUDE.mdの控え) | .env(APIキー) |
| 記憶(memory)※控えは本人の個人アカウントのリポへ | .credentials.json(ログイン情報) |
| 自作コマンド(skills)※同上 | settings.json(PC固有の許可リスト) |
.gitignore に .env *.key *.pem .credentials* *credentials*.json settings*.json を入れて自動で除外。~/.claude 直下そのものをリポにしない(settings.jsonや.credentials.jsonが同居する“秘密の温床”。丸ごと上げると流出する)。リポにするのは memory\ と skills\ の中だけ。git add . は使わない(秘密を巻き込む)。ファイルは個別指定。CHAPTER 3
複数人が同じファイルを同時に編集して両方pushすると、gitが「どっちが正解?」と衝突(コンフリクト)を出します。エンジニアには日常でも、非エンジニアには怖い。そこで役割を分けます。
CHAPTER 4
2時間ごとの自動バックアップ(OSタスクスケジューラ)を全員のPCで回すと衝突の温床になります。
git pull」の運用(最新の共有脳を取り込んでから作業)。なお、各自の“個人脳リポ”の置き先は1つ=本人の個人アカウントのPrivateリポ(全員・雇用形態を問わず)。理由:memoryはその人の全活動を写す手帳(一本化すると他社案件・私用の文脈も同じノートに溜まる)なので、会社のOrganizationに置くと ①複業・業務委託メンバーの他社案件の情報がうちの箱に自動流入する(逆方向も然り) ②オーナーが全員の手帳を読める=「④個人の脳は自由」と矛盾 ③退職時に“本人の手帳が会社に残る”後始末が発生。会社に残すべき知識はこれで欠けません——会社の資産は「共有脳+各プロジェクトのリポ」で担保する設計で、⑤知見の納品は義務のまま。一般企業のルール「会社のデータは会社の箱にしか置かせない」は業務プロジェクトと共有脳に適用します(こちらはOrganization一択・例外なし)。仕事手帳やペンケースまで会社の金庫に入れる会社がないのと同じ線引きです。
社員のmemory/skillsを全員共通の1つに混ぜてはいけません(①同じ箱への複数自動push=衝突する ②memoryは“その人の仕事の文脈”を覚える個人の手帳=混ぜると記憶が混線する)。そして混ぜないだけでなく、手帳の箱そのものを会社のOrganizationの外=本人の個人アカウントに置きます。
FIG. 会社運用の完成形 — 手帳(記憶・道具)は自分の箱、教科書と成果は会社の箱
社員Aが社員Bの知見を使いたい場合、Bの脳を直接覗くのではなく、共有脳を経由します。
直接覗かせない理由は権限だけではありません。個人のmemoryは“その人の作業文脈の手帳”で、他人が読む前提で書かれていない(「例の件は△△で対応」は本人にしか分からない)。他人に使わせる知識は、共有用に整えて共有脳へ。どうしても必要なら、オーナーは権限で「特定のプロジェクトリポを特定の人に見せる」こともできますが、基本は共有脳経由が正解です(なお脳リポは各自の個人アカウントにあるため、オーナーにも見えません)。
FIG. 全員が守る1本のリズム
CHAPTER 5
「ハブPCの人が辞めたら脳が消えるのでは」と心配になりますが、向きが逆です。ハブPCは“データの本体”ではありません。
招待のやり方は2通り——A. 個人アカウントのまま Collaborator 招待(今すぐ・ただし読み取り専用にできないので「メンバーはpushしない」はルールで守る)/B. 無料の Organization を作って移す(Readロールでpull専用を仕組みで強制できる)。推奨はまずA → 必要になったらB。クリック手順は教材「はじめてのGitHub設定(補足D:複数人で使う)」にまとめてあります。
CHAPTER 6
CHAPTER 7
いきなり「全員が本線に自由にpush」は非エンジニアには難しい。pull専用から始めて、少しずつ書き手を増やすのが安全です。
git clone して pull 専用(読む・使うだけ)。ここまでで「全員が同じ会社ルールでAIを使える」が実現し、衝突ゼロ。CHAPTER 8
メンバー(特に、既に自分のやり方を持つエンジニア)に第二の脳を“押し付ける”と嫌がられます。原則は「アウトプット(知見の納品)は義務・ツール(個人の脳の作り方)は自由」。
| 内容 | 強制していい? | |
|---|---|---|
| ① 組織に入る | 業務リポは会社のOrganizationに作る | ✅ 当然(会社のGitHubを使うだけ) |
| ② 秘密の作法 | 鍵を上げない・チャットに貼らない | ✅ 強制OK(常識・誰も嫌がらない) |
| ③ 共有脳をpull | 会社の共通ナレッジを参照 | ○ 推奨(本人の得になる) |
| ⑤ 知見を共有脳に残す | 業務で得たナレッジを共有脳へ(方法は自由:PR/管理人に渡す/botに報告) | ✅ 強制OK(=業務報告の一種。日報・引き継ぎ書と同じ“納品物”) |
| ④ 個人の第二の脳 | 自分のmemory/skills・自動バックアップ | ❌ 強制しない(個人の生産性ツール) |
個人のmemory/skillsを“そのまま”共有脳にアップはしません(個人の手帳は本人にしか読めない書き方だから)。共有用に整えた1枚のMarkdownにしてから入れます。整えるときの注意が1つ:共有脳に入れる知見は“それだけ読めば分かる完結した形”で書くこと。個人memoryのような「詳細は◯◯リポを見ろ」という付箋型のままだと、そのリポを読む権限がないメンバーには役に立たない(権限は最小限が基本のため)。方法は難易度順に3つ——どれでもOK:
| 方法 | やり方 | 向き |
|---|---|---|
| a. 管理人に送る | チャットで「これ共有脳に入れて」と内容を送る → 管理人が整形して追加 | 全員・初日から(一番簡単) |
| b. AIに頼んでPR | Claude Codeに「この知見を共有用にまとめて、共有脳リポにPRで出して」→ AIがブランチ作成→PR提出まで全部代行 ※この方法はWrite権限が必要(標準は全員Read)。使いたい人は管理人に言えば付与 | 少し慣れた非エンジニア |
| c. 自分でPR | Markdownを書いてPR(合流申請) | エンジニア |
PR=「この追加を本線に入れてください」という申請(承認制の投書箱)。a/b/cどれでも最後に管理人が承認(マージ)して初めて共有脳に入るので、共有脳が荒れません。
~/.claude/CLAUDE.mdへ)。設定は1回だけ・以後は実質全自動——1行を「共有ナレッジは C:\dev\shared-brain を参照。参照する前に git pull で最新化すること」と書いておけば、最新化(pull)もAIが毎回自動でやる(pullは“読むだけ”なので全員が何度やっても安全)。メンバーの手作業は「最初にclone+この1行」の1回きり。組織に入るにも個人アカウントが必須(招待は個人アカウント宛て)。だから順番は一本です:
「個人リポで練習してから」は挟まない——①ルールが1本になる(業務で作るものは最初から会社の箱・例外なし。後から移すのは手戻り&忘れる)②git操作は組織内でも全く同じ ③初日から「会社の資産を作っている」意識になる。個人アカウントは私物・個人の学習メモ・自分の第二の脳の控え(memory-〈名前〉/skills-〈名前〉)の置き場として並存(=業務=組織/私物と手帳=個人)。共有脳がまだ空でも、組織の中で作らせるだけで「退職しても残る・開発物が会社に貯まる」=それだけで導入価値があります。※招待画面の「SAML single sign-on(Enterprise 30日トライアル)」の勧誘や「Invite a billing manager」は不要・無視してOK。
参加ガイドのコピペ用の雛形はカリキュラム setup/github/メンバー参加ガイド_雛形.md にあります。置き場所=共有脳リポのREADME(メンバーがcloneした瞬間に最初に読む場所)。会社名を差し替えてそのまま使えます。
全員にClaude Codeを契約させる必要はありません。
FIG. 2階建て — ライト層はbot経由(契約不要)/作る人だけClaude Codeの席
なお「ライト層がSlackでAIを使う」だけなら、自作せずAnthropic公式の「Claude Tag」を使う道もあります(Claude Team/Enterprise契約が必要・導入はSlackアプリを追加するだけ)。自作の常駐エージェントとの向き不向きの比較は教材「Slackで誰でもAIを使う「Claude Tag」」へ。
Claude Codeには「Local(自分のPC)/クラウド(Claudeのサーバー)」の実行場所の選択がありますが、チーム運用のためにクラウドを選ぶ必要はありません(各自Local+共有リポのpull/pushで完結)。知っておくのは2点だけ:①クラウド実行はGitHubからリポを取り込んで動くため、各自のPCの~/.claude(個人の脳)は読まれない——第二の脳の恩恵をフルに受けるのはLocal実行で、クラウドの成果はブランチ→PRで返る。「脳はGitHubにバックアップしてあるから読めるのでは?」も誤解で、クラウドが取り込むのは“作業対象のリポ1つ”だけ。バックアップリポを勝手に取りに行く仕組みはなく、「起動時に~/.claudeを必ず読む」という組み込みの習慣はローカル専用(バックアップ=保険箱に控えを預けてあるだけで、支社のAIが毎朝取りに行ってくれるわけではない)。②ただしリポの中に置いたCLAUDE.mdはクラウド実行でも読まれる(公式仕様)=「どの環境でも全員に効かせたい会社ルール」は共有リポ内のCLAUDE.mdに書くのが正解。
CHAPTER 9
同じ仕組みでも、1人(①)と会社(②)では設定と注意点が少し変わります。移行するとき・教えるときはここを見直す:
| ①1人 | ②会社(複数人) | |
|---|---|---|
| 箱の場所 | 全部、自分の個人アカウント | 共有脳・プロジェクト=Organization+Base permissions=None(作成直後に必須)。自分の脳の控え=①と同じ個人アカウントのまま(手帳は人に付く) |
| ルール(CLAUDE.md) | ~/.claude/CLAUDE.md(自分のPC)の1つ | ①のものはそのまま+会社のルールが1つ増える:自分のルール=①と同じ~/.claude/CLAUDE.md/会社のルール=共有脳リポの中のCLAUDE.md(cloneするとC:\dev\shared-brain\CLAUDE.mdとしてPCに来る)。→ 何がどこにあるかは、すぐ下の整理表 |
| 記憶(memory)の読み込み | 個人memory=自動(MEMORY.md自動読み) | ①と同じまま変わらない(自分のmemoryは自動で読まれる)。増えるのは会社の知識(共有脳)で、これだけは自動では読まれない→ 必要な時にAIがpullして読みに行く(CLAUDE.mdの参照1行で誘導) |
| 自動バックアップ(push) | 自分のリポへ自動でOK | 自分の脳リポ(個人アカウント宛て)=自動OK/共有リポへの自動pushはハブ1台だけ。共有脳への追加は、管理人がメンバーの知見(チャットで受け取る・プロジェクトリポから拾う)を手動でpushするのが基本形(慣れたら仕組みを作って自動化も可能) |
| 権限 | —(全部自分) | Base permissions=None =「メンバーを招待しただけでは、どのリポも1つも見えない」状態から始める設定(見せたいリポにだけ、後から個別に権限を足す方式)。そのうえで共有脳リポにだけ全員Readを付与(推奨:まずReadのみ。Writeはエンジニアが希望したら) |
| 知見の共有(昇格) | —(全部自分の脳) | 基本形=メンバーの納品(方法自由)/補助形=オーナーがプロジェクトリポから吸い上げ→自分の目でチェック→共有脳へ。※メンバーの義務は「知見を会社に残すこと」だけで、残し方は自由(チャットで管理人に送るだけでもOK)。脳(memory/skills)は2時間ごとの自動バックアップ(自分の個人アカウント宛て)で勝手に残るので、メンバーが自分の手で必ずやるのは担当プロジェクトのリポへのpushくらい |
「CLAUDE.mdが2つ?共有脳の中には何が入ってる?」と混乱しやすいので、実物の場所で整理します:
| 何 | 実物のある場所 | AIはいつ読む |
|---|---|---|
| ① 自分のルール | ~/.claude/CLAUDE.md | 毎回自動 |
| ② 自分の記憶(memory) | ~/.claude 配下(目次MEMORY.md+メモ群) | 目次を毎回自動 |
| ③ 会社のルール | C:\dev\shared-brain\CLAUDE.md(共有脳リポの一部。cloneでPCに来る) | 普段は①に書いた1行から読みに行く(shared-brainの中で起動した時は自動) |
| ④ 会社の知識 | C:\dev\shared-brain\knowledge\(目次INDEX.md+テーマ別.md) | 自動では読まない。必要な時にAIが git pull→参照 |
| ⑤ プロジェクトのルール | 各プロジェクトフォルダ直下の CLAUDE.md | そのフォルダで起動した時に自動(リポと一緒に配れる=クラウド実行でも効くのはこれ) |
※共有脳リポ(shared-brain)の中身は③と④だけ。個人のmemory・MEMORY.mdは共有脳には入っていません(それは②=各自の~/.claudeにあり、控えは各自の個人アカウントのmemory-◯◯リポへ自動push)。ファイル単位の完全な地図は → 教材「AIの記憶と第二の脳」の“完全版の完成形”の図。
| 役割 | 手帳のバックアップ (→自分の個人アカウント) | Organization | 共有脳 | プロジェクト | 知見の納品 |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表(管理人) | する | 作成・権限管理 | 作成・設定・本線push | Orgに作る | 承認する側+自分も納品 |
| メンバー (Claude Codeで開発する人) | する(推奨。初回だけ“送る中身(.mdのみ・秘密なし)”を見て確認→以降自動) | 参加 | clone+pull(AIが自動) | Orgに作る・push | 義務(方法自由) |
| エンジニア | 任意(自分のやり方でよい) | 参加 | clone+pull | Orgに作る・push | 義務(方法自由) |
| ライト層 (AIによる開発はしないメンバー。Slack/Discordで報告・質問だけ) | — | (不要な場合も) | botが代理参照 | — | 義務(チャット/bot報告) |
| 全員共通 | セキュリティ(deny設定・.gitignore・鍵をチャットに貼らない)+CLAUDE.mdの整備 | ||||
※手帳のバックアップは標準手順に含める(初期設定プロンプトが実施する)が、強制ではない(④個人の脳は自由の原則。嫌なら飛ばせる。ただしPC故障で脳が消える保険なので非エンジニアには勧める)。
この設計(Free・Base permissions=None・手帳は個人アカウント)は、オーナー中心で「開発する人が数人まで」の組織に合わせた形です。寿命は組織の人数ではなく、下のサインが出たかどうかで決まります(各行は独立したサイン・上から順に来るとは限らない。サインが出るまで先回りして作り込まない):
| 節目(このサインが出たら) | 検討すること | 目安コスト |
|---|---|---|
| 今(どのサインも出ていないうち) | 現行設計のまま。組織の総人数は関係なし(開発する人が1〜2人なら20人の会社でもこのまま)。ただしOrgのオーナーをもう1人追加する作業(Settings→People→Ownerロールで招待・数分)だけは今すぐ(1人に何かあっても会社の箱に触れる人を絶やさない) | 無料 |
| Claude Codeで開発する人が3〜4人になった | 「今週の学び」の報告集め(声かけ・回収・未回答リマインド・共有候補リスト)を自動化する。週1の決まった時刻に聞くだけなら定期実行=サブスクの範囲内で可。いつでも話しかけられる常駐botにするならAPI従量(会社持ち) | サブスク内〜API従量 |
| 共有脳のWrite(書き込み権。AIに「PRで出して」と代行させるのに必要)を持つ人が自分以外に2人以上になった/mainへの誤push事故が1回でも起きた | GitHub Teamへ:ブランチ保護=「本線はPRのみ」をルールでなく機械で強制できるようになる | $4/人・月 |
| 取引先のセキュリティ調査票・ISMS等の認証取得・上場準備で「ログインの統制」を求められた | GitHub Enterprise(SSO)へ:会社のID基盤でログインを統制・監査ログ。メンバーは個人アカウントのまま、入口に会社の関門を付ける | 約$21/人・月 |
| 取引先や規制から「業務情報を個人アカウントに置くこと自体の禁止」を明文で要求された(=自発では来ない外圧の行。未上場・小規模ではまず不要) | EMU(会社発行アカウント):既存Orgへの招待ではなく、Enterprise配下にOrgを作り直してリポを移行する“別世界の新設”。手帳の置き先ルールも再設計になる | 約$21/人・月+移行の工数 |
※上2段は運用の話・下3段はGitHubの契約プランの話。下に行くほど「信頼で回す」から「仕組みで縛る」へ変わります。料金は2026-07時点=変わりやすいので契約前に公式確認を。